短編 | ナノ


▼ 虜にしてよ

※このお話は、短編“レッスン…”の後のお話です。


ねえ、虜にしてよ。
寝ても醒めてもあなたのことしか考えられなくなるくらいに。
あなたがいないと生きていけないってくらい切なくさせて。




教授ったら、また薬をつくってる。
せっかくの休日、皆の目を盗んでやっとこの部屋に辿り着いたっていうのに、またも放置状態…。
教授ってば、構って欲しい時はそう言えって言ってたけど、さすがに調合している時はやめたほうがいいよね。手元が狂って大爆発!とか嫌だもんね?
もうちょっと後で声をかけてみよう。
私は宿題をすることにした。教授がひと段落つくまで…。



レイの顔をまともに見られぬ。
この間、あんなにも我を忘れて愛してしまった。
嫉妬のなせる業とはいえ、冷静になってみると危険なことをしたものである。二人の関係が他の生徒に知れ渡ってはいけないのに。
つい、嫉妬のあまり我を忘れてしまった。気をつけなければならない。
それに最近反省しているのだが…。
我輩はあまりにもレイに対して積極的すぎやしないかね?会うたびに手を出しているような気がする。

どうも、相手がレイのことになると自分を抑えられない。
あの、ヴォルデモートでさえ我輩の心は読めないはず。それほどの閉心術を身につけているはず。ああ、それなのに…。
我輩の自制心は何処にいったのだ。レイに対しては、あふれ出る気持ちを抑えることができない。

閉心術?そんなもの無意味だ。何の役にも立たぬ。
自分を抑えられぬのだから、心を閉じることもできぬ。

やはりレイが一番最強だからなのか…。
と、とにかく今日はレイに手を出さないことにするべきだ。うむ、よく考えてみるとこの考えは正しいような気がした。
それゆえ我輩は、せっかくの休日にレイが来ているのに急いで調合する必要がない薬を作っているのであった。
許せ、レイよ。お前のためでもあるのだ。



やっと教授のお薬の調合が終わったみたい。これでちょっとは構ってくれるかな…。
そう思って教授の動きを目で追ってるんだけど、一つ気づいたことがあった。
教授ったら、いっつもピッチリと首まで止めているシャツの襟を開いているのだ。
め、めずらしい〜!よっぽど暑かったんだね?
教授の首筋が見れるなんて本当に貴重かも。せいぜいベッドの中くらいでしか、見ることが出来ないもんね?
何か、明るい日の光の下で見る教授の首筋…それはそれでセクシーですね…。
私はじっと見つめてしまった。
ああ、私、あの首筋にキスしたことあったっけ。あれって大胆行動だったな(作者注:拍手御礼“好奇心は身を滅ぼす”を参照)
鍋を掻き混ぜるのは教授だって暑いのだろう。首筋にうっすら汗が光ってる。
私はそれを見ていてイケナイ気持ち抱いてしまった。


『ねえ、あの首筋にキスをしてみたら?いっつもセブルスが私にしているみたいに愛撫してみたら?だってあなた、構ってほしいんでしょう?』

悪魔の私が囁く。

『そんなことは駄目よ!だって、セブルスってば真剣よ?仕事中に邪魔したくないんだってば』

天使の私が反論してきた。

悪魔の私が馬鹿にしたように笑う。

『何言ってるの?そんな風に考えているってことは、教授をセクシャルな意味で捉えているってことでしょ?恋人同士なんだからいいじゃない。たまには積極的な表情を見せれば?』

天使の私が忠告してくる。

『だめよ!きっとスイッチが入っちゃうわ?そうしたら朝まで離してくれないわよきっと。最近あなたたちヤバイわよ?このままだったらいつか皆にバレてしまうわ』

悪魔の私は反論する。

『大丈夫よ〜バレやしないって。誰があなたたちが恋人同士だなんて思うものですか。簡単にはバレ無いわよ大丈夫。それよりもほら…あなたからセブルスを愛してみたら?いつもあなたは受け身でしょ?そんなことじゃ駄目。相手をちゃんと想っているってことが簡単に伝わる方法なんだから…』

二人の私が囁いてくる。ああ、どうしたらいいの…。

教授ってば、やっと終わったかと思ったのにまた何かを調合しようとしてる。
酷いじゃない、教授。私の気持ちはどうなるの……?
私は愛しさで切なくなってきた。こんなに近くにいるのに、あなたが遠い…。




一つの調合が終わったので、次の調合に移ることにする。
自制心だ…。レイに手を出さないようにするには、あやつを見つめてはならぬ。
レイの顔を見てしまったら、見つめてしまったら、手を出さずにはいられない。きっとまた抱きしめてしまう、愛してしまう…。
そう、ならないようにせねばならぬ。
我輩が調合準備をしていたその時、背中に衝撃が走った。
お前…!急に抱きついてくるなど、どうしたというのだ?

「セブルス……まだ終わんないの…?」

レイが声をかけてくる。何て、甘い声を出すのだ。我輩の自制心を試しているのかね?

「もう少し、かかるゆえ…すまないが座って待ってくれ…」

我輩はやっとのことでそう答えているのに、お前ときたら、

「やだ……そんなに待てないもん」

そう言って我輩に擦り寄ってきた。
ああ、お前のそのぬくもり…その香り…抱きしめたい。思いの限り抱きしめて、レイ、お前のその愛しい唇を思う存分味わいたい。そしてその後はお前を押し倒し、そのまま朝まで……。
我輩はそこまで想像しかけてふと我に返った。
今日は手を出さないと考えていたのではなかったか。いかん、自制心を取り戻せ!
我輩は首を振ると、

「レイすまぬが…もう少しだから…」

我輩はゴクリと唾を飲み込むとやっとのことでレイに言い聞かせた。

「じゃあ終わるまでこうしてるもん…」

なんとレイはそう言うと、我輩の左手を掴み、そこにキスをしてきた。
そうして小指に軽く歯を立ててくる。
な………なにを大胆な……!
そのようなことをされて、我輩の自制心は何処かへ行ってしまった。このような誘惑に耐えられる輩がいたら教えて欲しい。

ああ、お前のその唇の感触…もっと味わいたい…。

我輩は……ついに、堕ちた。




私が心の衝動のままにそんな行動をとってしまったことがよっぽどショックだったんだろうか?教授ってば固まってるよ。
もしかして呆れられた?それとも怒った?それとも馬鹿にした?
私が不安に思ったその時。
教授はがばりと反転すると私を壁に押し付けた。
やっぱり、仕事の邪魔をしちゃったから怒っちゃった?
そう思って教授を見る。教授、目つきが、目つきがヤバイよ…。獲物を襲う時の目をしてる。
怒ってはいないみたいだけど、教授を豹変させちゃった…のかな?

「レイ、お前はイケナイ子だな…。我輩はなんとかお前に手を出さないように必死なのに…そのような誘惑の方法を、誰から教わったのだね?」

教授はそう言うと、私の唇に指を伸ばし、唇をなぞってきた。あ…それだけで、感じちゃう…。
私は切なくなって教授を見つめた。

「誰にも教わってないもん…」

教授はニヤリと笑うと、私の首筋に指を這わせてきた…。


じれったい…もっと触れて欲しい。
あなたのその唇で、その舌で、私を味わって……。
とても言葉にできない淫らな気持ちを込めて、教授を見つめる…。
教授の目が妖しく光った。

「そうか……ではもうここから先は言葉はいらぬな」

教授はそう言うと、私にキスをしてきた。
初めはゆっくり…そしてだんだん激しく…。
教授が私を蹂躙していく。教授の腕が私の身体を壁に強く押し付けた。
ああ、もっと頂戴、もっと激しくして。もっと、もっと私を感じて欲しい……。
言葉の変わりに私は教授の身体に腕を廻した…。



ああ、これでもう私はあなたの虜。
もう、あなたの腕の中から逃げられない。逃げるつもりもないけれど。

時間はたっぷりある。
他のことなんか考えられなくなるくらい、セブルス、私をあなたで一杯にしてね。


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