短編 | ナノ


▼ レッスン…


教師というのは憧れの職業の一つだとか。

もちろん我輩はそんな言葉に惹かれてこの職業を選んだわけではない。
請われたというのもあるが、純粋に教師という仕事をしたかったからなったのだ。
教授という肩書きではあるが、仕事としては教師と同じであるゆえ、学生へ担当の教科を教えることが主な仕事だ。
我輩の担当は魔法薬学。主に実技が中心となる授業である。
魔法薬学は繊細な技術とセンスが求められる授業だ。大雑把に行なったり、きちんと理解しないで薬を調合することは、時に命にかかわることになるのだ。
教師として、生徒の安全は確保せねばならぬ。ゆえに、きびしい態度で臨んでしまうのは仕方なかろう。
我輩のことを陰険教授と呼ぶ輩がいるようだが、別にかまわぬ。何と言われようが何と非難されようが痛くも痒くもない。



いつものように定時に起床した我輩は、大広間で軽い朝食を食べ、まずは部屋へ戻り本日の授業の準備をした。
安全に授業を行なうためには、事前の準備が大切である。手順をざっと見直し、材料を揃える。
この下準備こそが結構な手間なのであり、正直、助手が欲しい所だ。実は以前雇ったことがあったのだが、ほとほとその助手の才能のなさに呆れ果て、辞めてもらった事があった。
そのようなことがあってから校長は我輩の授業には助手を置かなくなった。我輩はどうみても人付き合いが良いほうではないからな。
本日は午前にハッフルパフとレイブンクローの合同授業、午後からスリザリンとグリフィンドールの合同授業がある。どちらも2年生のだ。

今日はレイと会えるのか。我輩は嬉しくなった。
決して自ら言ったことはないが、たとえ授業中であっても我輩の最愛の恋人、レイに会えるのは嬉しいことであった。
教師という立場上、あからさまな態度はできない。できないが、ただレイの元気な顔を見ることができるだけも嬉しい。それだけで心が癒されるような気になる。
我輩もとうとうここまで来たか。

昔は恋に浮かれる輩を見ては冷たい視線を送っていたが、まさか自らがそうなるとは…人生は驚きに満ちている。我輩は思わず苦笑した。
あまり脱線しては準備をしくじってしまう危険がある。我輩は頭を切り替えた。午後の分も準備しておかねば。本日の午後の授業では少し難しい薬を調合することになるのでな。




午前の授業を無事終え、軽い昼食を摂った後は午後の授業までレポートの採点をする。
教師という職業は、なかなかもって楽な職業ではない。
生徒を評価しようとすると、このような課題を出すことになる。それは我輩が採点しなくてはならないため、レポートを提出する方も面倒であろうが評価をする方も大変なのだ。
さて、机に向かって採点しようとしたのだが、どうも集中できない。
その理由はわかっている。それは先程の光景のせいであった。


大広間で昼食を摂っていると、ポッター共がやってきた。レイも一緒だ。今日も愛らしいな。我輩は自分の頬が自然と緩むのを感じた。
あやつらは昼食を食べながら楽しそうに話しておる。レイもニコニコと周囲に笑顔を振りまいていた。


レイよ、何故そのように他の輩に笑顔を振りまくのだ?
そんな魅力的な笑顔を向けてはいけない。お前のことを狙っている輩がどのくらいいるのかお前は解ってるのかね?
お前が無自覚にその魅力を振りまくから、周りの生徒だけではなく、大人までお前の魅力の虜になっているのだぞ?さらになんとしもべ妖精にまで人気があるようであるし。我輩の情報網をなめてもらっては困る。我輩は溜め息をついた。
紅茶を飲みながらさりげなく観察していたが、我輩は正直面白くない。


笑顔を振りまくのは我輩だけにしたまえ。
お前が見つめるのは我輩だけでよい。
我輩のことだけを、考えて欲しい。
我輩がレイのことを考えるのと同じくらい…。


そんな考えが頭を占める。
ふっ、子供一人にこのざまだ。こんなことがダンブルドア校長に知れたら…。
そのようなことを考えていると、許しがたい光景が目に飛び込んできた。
レイに抱きついている輩がいる!
なんと、ウィーズリーではないか。おのれ、よくも我輩のレイに触れたな!
我輩の許可もなく、許せん!!
我輩は怒りのあまり、ウィーズリーに呪文を唱えようとしてしまった。そこは何とか踏みとどまったが…。
くそっ!ウィーズリーの奴…。


我輩は先程の光景を思い出しさらに怒りを募らせた。
この怒りの感情が我輩の胸を渦巻いているのだ。とても採点に集中できるものではない。
この後、授業もあるのだ。きちんと教師の仮面をつけ、授業ができるのであろうか…。我輩は自分自身の感情をもてあましていた。こんなことは初めてのことであった。
この年になってこのような感情を経験するとはな。
我輩は仕方なく採点を諦め、授業の準備をすることにした。



自分では、我輩はかなりの自制心を使ったと思う。

なんとか教師の仮面を被り本日の調合“覚醒薬”について解説を行なう。
説明を加えながら黒板に調合の手順とポイントを列挙する。生徒は羊皮紙にそれを写しているが……またもや見たくないものを見てしまった。
ウィーズリーがレイに向かって耳打ちをしているではないか!
おのれ!そうまでして我輩のレイに接近するとは、お前もレイの魅力に落ちたな?許せん!
我輩の授業を聞いていない、ということよりも我輩のレイにちょっかいを出していることが何よりもムカついた。板書するチョークが怒りでポキリと折れた。
怒りのあまり自分を制御できそうもない。おのれウィーズリー、思い知れ!

「…………それでは今の我輩の説明を聞いて、Mr,ウィーズリーはどう思うかね?」

「それでは以上の調合のポイントについてもう一度…では、Mr,ウィーズリー、答えたまえ」

「Mr,ウィーズリー………」

「Mr,ウィーズリー………」

我輩にしては、恐ろしく平和的に反撃をしてやった。フン、これでも教師ですからな?
生徒は何事か、という顔をしておったが、知らぬ。我輩は止めるつもりはない。授業の最後にはウィーズリーの奴はぐったりとしておった。
我輩のレイになれなれしく触るからだ。これに懲りたらもう止めたまえ。




授業が終わり、青い顔をしたウィーズリーが教室を出て行った。我輩は少しすっきりした。少しだがな。
授業の後片付けをしていると、ふと人の気配がする。
振り向くとなんとレイではないか。頬を膨らませておる。怒っているのかね?
我輩の授業内容について文句がありそうだな。

「…どうしたのだね?」

しれっと答えてやる。
レイはさらに頬を膨らませると、

「セブルス、酷いです!どうしてロンにばっかり意地悪するんです?何にも悪いことしてないのに…」

と言ってきおった。
お前は本当に自覚がないのだな。我輩は溜め息をついた。
これは指導が必要であろう。教師として、な…?

我輩は後ろ手にこっそりと杖を掴むと杖を振り教室のドアに鍵をかけた。ついでに防音魔法を施す。そしてさらにに遮蔽魔法もかける。
さあ、レイよ、これからレッスンといこうではないか。



「ほう?レイは本当にウィーズリーが悪いことをしていないと思っているのかね」

我輩はレイを見つめる。
レイは感情が高ぶっているのであろう、頬を染めている。ああ、怒った顔も可愛いだなんて、本当に我輩はどうかしておるな。

「悪いこと?…確かに授業はあんまり真面目に聞いていなかったみたいだけど…でもそんな程度であんなにあからさまに怒らなくたって…」

反論にやや覇気がないな。やっぱり自覚なしか…。我輩は額に手を当てた。自然にまた溜め息がでる。

「…レイ、お前は本当に自覚がないのだな」

「へ?…自覚がないって、なにが?」

レイはきょとんとしている。お前…隙だらけだぞ。これでは襲ってくださいと言っているようなものだ。
我輩はクッと笑うとレイを抱き寄せた。耳元、頬、肩をなぞりながら、

「ウィーズリーが触れた場所だ……我輩が見ていないとでも思っていたのかね?」

耳元で妖しく囁いてやる。
レイは頬を真っ赤にしていたが、ふいに気が付いたらしい。

「ええ?あれはただふざけて騒いでいただけだし…ってセブルス、見てたんですか?」

「当たり前だ。我輩の物にあのように遠慮なく触れおって。さらに授業では耳元で囁いていたではないか!!断じて許せん!」

「耳元でって…内緒話は囁かないと内緒話じゃなくなっちゃうでしょ…だから耳元で話しただけなのに…」

「聞こえませんな。我輩の物に許可なく触れて良い訳はない。そうであろう?」

「僕はいつからセブルスの物になったんですか…?」

レイはそんなことを言ってきおった。
狼にその台詞はまずいであろう。だからお前は無自覚だというのだ。我輩は胸の奥でクツリと笑うと、

「そんな台詞を、今更言うのかね?やれやれ、自覚がなさすぎる。これは特別授業が必要ですなぁ?」

レイよ、覚悟したまえ。お前が地雷を踏んだのだぞ?
我輩はわけがわかっていないレイにニヤリと笑いかけると、顎を掴み、噛み付くようにキスをした。
ふ、驚きで固まっておるな?我輩は思う存分レイの唇を味わった。


レイとのキスはいつも終わりがない。何度キスをしても、したりないのだ。

満足できない、もっと欲しい。
もっと、もっとお前を感じたい。
レイ、お前を…。

「……ど…して……?」

やれやれ、息も絶え絶えだな?

「レイ、お前は我輩のものであろう?この指先から、つま先まですべて…」

我輩はそう言うと、レイの手を取り、指先に口付ける。とたんに目を潤ませるレイ。

「ここも……ここだって…お前の身体は我輩のものだ…」

我輩はレイの耳元、首筋にキスをする。

「……っあん…セブルスの…もの…なの?」

「そうだ…ちゃんと自覚できるよう、我輩が教えてやる……」

我輩は耳元で囁くとそっとレイの身体を横たえた。レイはここが教室であるためか外を気にしているようだが、我輩がこっそりと遮蔽魔法と防音魔法をかけていることは黙っておいた。

その方がいい。
恥らうお前をもっと見ることができるから…。


「セブ…ルス…ここ、教室……」

「そんなこと…すぐに忘れさせてやる……」

我輩はそう言うと、レイの制服のボタンを外した……。

「……ああん…わか…った…から…ぼく…はセブルスのもの…だよ…ああっ!…だから、だから、もう……これ以上は……」

お前の両手が快感に耐えられず縋るものを探して空をさまよう。
我輩は愛撫をしながらその手を捕まえた。


お前の身体も、心も、すべて我輩のものだ…。
もう、捕らえて離さぬ。
心だけでなく、身体も虜にしてやる。
レイ、お前は我輩の……我輩だけものだ。
よく、憶えておきたまえ。
愛撫をしながら、何度も、何度も、レイに囁く。
お前が根を上げるまで……。



レイはあまりの快感に気絶してしまったようだ。
さすがにやりすぎたか。我輩は苦笑した。レイの寝顔を見つめる。


お前が愛しくて堪らぬ…。
あまりに愛しすぎてお前を壊してしまわないか心配だ。
ああ、レイ、早く大人になりたまえ…。このままでは、我輩はお前が大人になる時まで待つことができそうもない。
そっとレイの唇にキスをすると、我輩のローブでレイの身体をくるむ。
抱き上げると、我輩は部屋へ向かった。

レイが起きるまでは、レポートの採点をしようではないか…。
起きたら、お前の大好きな紅茶を淹れてやろう。
だから、早く目覚めるのだ。
そして、我輩に笑いかけてくれ。心を震えさせるその微笑を我輩だけに見せて欲しい。

我が、最愛のレイよ。


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