1 可愛いおねだり
※このお話は間奏“私をお家に連れてって”内でのお話となります。
『コスプレは、一回やったら癖になる』
これ、親友の言葉です。
あの子、前付き合ってた彼氏とアリスごっこしたりしたって言ってたな。それを聞いた時は、
「何やってんの…アンタ、馬鹿じゃん?」
って言ったんだよね、確か。
だって何それ。普通にいちゃつけばいいじゃん。日本人がアリス?無理あるって絶対。
私がそう言ったら、親友は可哀想なモノを見る目をしていたっけ。
『レイ、可哀想。二次元の彼氏じゃあねぇ……仕方ないけど……ねぇ……』
親友のその言葉に、なんかムカついたのを憶えてる。
けどさ、コスプレっていったって、相手もいないのにできないし。第一萌えないってそういう状況って。私は、何故かそう思っていた。
けど…こちらの世界にやって来て、おじいちゃんと教授にほぼ騙されるような形でコスプレをしてみると、(作者注:短編“オトナの遊び方”を参照)彼女が言う事もなんとなく理解できた私だった。
確かにコレは刺激的でした。
普通にいちゃつくよりもある意味凄いかも。シチュエーションに萌えるよね…。
癖になったらどうしよう……。教授に愛されちゃった私はそう思っていたのですけれど。けど、ちょっと待ってくださいよ?
どうして私ばっかりがコスプレさせられる訳?教授だってやらなきゃおかしいでしょ!!
ということで、今回、休暇ということも手伝って、教授をコスプレさせちゃうんだもん!
私はムフフと笑うと、“ふくろう便エクスプレス”である物を注文したのでした。
あー楽しみ!!
これから起こる事が楽しみで仕方ない私は、思わずニコニコと教授へ無駄な笑顔を振りまいてしまう。
異常なくらい機嫌の良い私を見た教授は、訝しげな顔だ。
「どうしたのだ?レイ……何やら、楽しそうだな」
私は笑顔を返して返事をした。
「うんっ!セブルスとずーっと一緒にいられてとっても幸せだから。セブルス……大好き!!」
私はそう言って、ソファーで本を読んでいた教授に抱きついた。あ、教授ったら嬉しそうだ。
本当に可愛いんだから。恥ずかしがって、少し目を伏せるそんなあなたの仕草が好きよ?教授。
「そ、そうか……。我輩もレイ、お前とずーっと一緒にいられれてとても幸せだ。愛している……レイ…」
教授はそう甘く囁くと、私を抱きしめてキスしてきた―――。
そんなイチャイチャから数日が経過したある日。
教授とまたもやイチャイチャしながら食事をしていたら、ふくろう便がやって来た。
やった!ずーっと待ってたんだもんね!!嬉しいな、今日は私の夢がついに実現する時なのね……。私の胸はときめきが止まらない。
だってその箱の中身は――――。
教授は訝しげな顔をしている。
「なんだ?何故、ふくろう便が…?我輩は何も注文しておらぬが―――」
「僕が注文したの!!ねぇ、これ、僕からセブルスにプレゼント!着てみてくれない?」
私は先手必勝!と考え、両手を祈りのポーズにして、上目遣いをしながら、目を潤ませてみた。
教授……オチるかな?
すると教授は固まり、あからさまに挙動不審者になってしまった。
「き…着てみる、とは、服なのかね?しかし我輩にも…好みというものがあるのだが―――」
ええ?そんなぁ〜。けど絶対に着て欲しい私は、簡単には引き下がらないもん!
よーし……コレはどーだ!!
私は教授の膝に乗ると、教授の首に両手をかけ、教授の顔ギリギリまで近づいた。そうして囁くように言ってみた。コレで落ちなかったら、あとはもうお色気しかないけど。
「絶対に似合うって!!お願い……僕のお願い、聞いてくれないの?ねぇ……セブルス、ダメ、なの…?」
私は教授の唇、ギリギリの所まで唇を近づけて、甘〜く囁く。
触れそうになる唇…。すると教授はキスしようとしてきた。駄目…すぐにはさせてあげないもん。
私は教授の唇をかわすと、教授の耳元に唇を寄せる。そうして、吐息と一緒に囁いた。
「ねぇ……お願い……セブルス……。着てくれたら、いいコト、してあげる……」
身体を重ねるよりもある意味ドキドキするこの駆け引き…。私の危険な台詞に、教授の呼吸が乱れるのがわかった。
しばらくの沈黙の後、教授の喉がゴクリ、と鳴るのがわかった。
「よ……よかろう…わかった。いいコト、とは本当であろうな?」
教授の顔色がとっても良かった。可愛い……教授ってば。
「勿論!僕、嘘付かないもん!」
私は輝くような笑顔を教授へと贈る。すると教授はニヤリと笑ってきた。
「フ……そうか……。ではこの服を着ることにしよう」
「ホント?!いやったー!!セブルス、大好きっ!!」
私は教授をぎゅっと抱きしめて、チュッとキスをした。
教授はしばらく包みを見つめて何かを考えていたみたい。その後、何故か教授ってばすっごい不敵な笑みを浮かべた。
どういうこと?
ニヤニヤと笑いながら教授は私に囁いてくる。
「レイ、我輩は着替えてくるゆえ……お前にお願いがあるのだが」
「お願い?なぁに?」
「フ……そのお願いとはな、準備ができるまで、バスルームにいてくれ。そうだな……10分経ったら、扉を開けるのだ。約束できるか?約束できなければ……この服は着れぬ」
「約束するっ!約束するから……絶対に着てね?」
「クク……約束しよう………」
教授はニヤリと笑うと、私に触れるだけのキスをしてきたのだった。
どうしてそんなに嬉しそうなんだろ?教授。私が楽しみにするのは勿論だけど、教授も楽しみみたい。
ひょっとして私という恋人が出来たから、ファッションに目覚めたのかしら?そうだったら良いな…。だって教授ってばいっつも同じ格好ばっかりなんだもの。ほとんど毎日全身黒尽くめだし、たまに私が服装について言うと、白いシャツになったりするくらいだし。
いや、格好良いよ?格好良いんだけれど……もっと素敵な格好もして欲しいって思っちゃうんだもの。
教授ってば、きっとあの格好似合うだろうな。なんか、胸がときめいて止まらないんですけど…っ!
胸をときめかせること10分。
時間だよね、ってことはこの扉を開けて、教授に逢いに行かなくちゃ。
私は深呼吸すると、扉を開けたのだった―――。
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