アラン・映画夢 | ナノ

2 そして、楽園へ…





再会は思いきり劇的に、かつスマートにしたい。

声をかけた私に、驚いた顔をするメイ。その美しさは何も変わっていなかった。あの時のまま……あの、初めて逢ったコンサートの時のままだ。
抱きしめ、耳元で囁く。「君が欲しくなった」と。甘やかな喘ぎ声を上げながら、震える君の太腿に、私は突き立てるように針を刺す。
君を虜にするために…………。







全てを捨ててでも、メイ………君が欲しい………。







どこへ行こうか。君がいる場所なら、私は何処でもいいが…。

南の島がいいだろうな。偽のパスポートなど、思いのままだ。安心してくれ。

誰も邪魔できない楽園で、メイ…君と二人きりで、何度でも、そう、何度でも愛し合いたい。
私は目的のためには手段を選ばない男だと言ったろう?メイ……私を生かしたのは君だ。

眠るメイを抱きしめながら、私は楽園に向かい歩き出した――――。




*****




「―――きなさい、起きなさい、メイ。そろそろ時間だ……」

甘く、私を呼ぶその声は、聞き覚えがあった。
そんな……嘘でしょ?彼がいるはずがない。だって彼は……裁判で有罪になって、刑務所に入っているはず。今度は違う刑務所に移送されるらしいって聞いたもの。

ああ、きっとこれは夢ね。

彼のことが忘れられないから……ついに夢にまで見ちゃうようになったんだわ。私って凄すぎる…だって、とてもリアルなんだもの。
その甘い声も…頬を撫でるその手つきも…。


「私……夢を見ているのね……」

すると気配で、彼が笑うのがわかった。ああ、なんだかドキドキしてきたわ…。

「夢かどうかは、目を開ければわかる。さぁ…メイ、目を開けてごらん」

優しく促すようなその声に勇気をもらった私は、そおっと目を開けた。
するとそこには、優しく微笑むハンスがいたのだった。

「ハンス……?」

「言っておくが、本物だ。夢でも幻でもない……私は、ハンス・グルーバー……」

「嘘……嘘よきっと」


信じられる訳がない。あの日、私の後ろで一緒に撃たれた貴方な訳がない。

「信じないのか?仕方ない……本当は、もう少し待ってからと思っていたのだが―――」

彼はそう言うと、私の頬に手を添えて、そして――――、


「ん…ッ………あ……はぁ…っ」


深くキスをしてきた。このキスの仕方は間違いない。卑猥に動くその指先の動きも……ああ、そんなにされたら……。

ハンスの唇が首筋から鎖骨を辿り、いつの間にか脱がされた胸の谷間に――――。

「メイ……この傷、痛かったろうに……」

彼の唇はまるで労わるようで、何度も傷口を辿り、優しいキスを落としてくれる。

「あ…ぁん……」

「愛している……愛しているんだ…メイ……欲しい……君が欲しい………」

「んんっ……ハンス……ハンスまって…っ」

「嫌だ……私がどれだけ待ったと思っている。何度夢見た事か……」

「あ…はぁんっ……ああんっ」

「ああ…愛してる………」





私だって愛してるわって言いたい。待っていたの。私だって…貴方のこと、ずっと待っていたのよって。
でも……ハンス、貴方の愛に溺れて、言葉が言えない。


仕方ないわ。今は貴方の愛に溺れましょう。離れていた分、私だって、貴方に沢山愛されたいもの。
だから、私からの愛の告白は、後にするわね?素敵なテロリストさん。




ハンスの激しい愛撫に溺れながら、私はこっそりと微笑んだのだった……。



End.

(H24,07,22)


→リンから朱魏さんへ

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