アラン・映画夢 | ナノ

4 仕組まれた出逢い



何故犯罪を犯すのか……理由を尋ねることは愚かな事だ。

手に入れたいモノがあった場合、私は手段を選ばない性質でね。結果として犯罪に繋がってしまうのは、致し方ないことだろう。



私の名は、ハンス・グル―バー。ロサンゼルスには半年前から滞在している。
ここで資金を調達するために、ある計画を実行中だからだ。



1回の襲撃で最大の利益を得る方法をシミュレーション中なのである。
紙面を広げると、ビルの見取り図を見ながら、策を練っていく。

どうやら、「ナカトミプラザ」を攻略するには沢山の仕掛けを解く必要があるらしい。フ…挑戦しがいのあるターゲットだな…。


「ボス…どうする?パスワードが沢山あるぜ。俺のテクニックでもかなり時間がかかる…」

テオの顔が真剣だった。私はテオに言った。

「それについてはまず、侵入後、高木社長にお聞きしよう。いつもの方法で…」

「いつもの…ねぇ。吐かなかったら?」

テオがニヤリと笑ってきた。

「その場合はお前の出番だ」

「ふふ…りょーかい!」

テオは嬉しそうにPCをいじりだす。アイツはメカオタクだからな。
するとテオがPCのある画面を見て歓声を上げてきた。


「わお!カワイコちゃんだねぇ〜……高木社長の娘かな?」

私はPCを見た。そこには、美しいドレスを着た黒髪の女性がいた。
軽く微笑んでおり、とても恥ずかしそうにしている。
この娘は………。

「その娘は高木社長の姪だ…」

「へ〜姪かぁ。ナカトミプラザで逢えるかな…?」

ニヤニヤしながらPCを見つめるテオに、私は言った。

「にやけてないでプログラムを作れ。テオ、もしものためではない。お前のプログラムがないと、この計画は成功しないぞ」

「わかってるって!お〜こわ……」

私の言葉に、テオは肩を竦めるとプログラムを打ち出した。




*****




この娘がヨシノブ・タカギの姪とは……。私は写真を見つめた。
部下に命令し、隠し撮りさせた娘の写真を眺める。楽しそうな笑顔だった。

26歳か……年齢よりも幼く見える。


この娘もタカギの親戚だ。パスワードを知っている可能性があった。当日、吐かせても良いが……何故か私は、それをしたくなかった。
それに―――、


「欲しいモノが増えた……」


私は苦笑すると娘の写真をコルクボードに留める。

「まずは確認がてら、ご挨拶といこうか?……メイ・シノハラ……」


コートを翻し、部屋を後にする。

私は、欲しいモノを手に入れる為には、どんな手段でも使う。メイ…君の心も、身体も……全てを手に入れてみせよう。

私は自分を笑った。ナカトミプラザへ襲撃するよりも、強く気分が高揚していた。



どんな風に出逢うべきか?
なんと声をかけるべきか?



いくつものシチュエーションが浮かんでくる。
御嬢様のようだから、簡単に騙されるだろう。つけ入る隙は、星の数ほどありそうだ。


私は拳銃を装備すると、車に乗り込んだ。メイを手に入れる方法を、これから考えねばならない。
部下にも知られないように、な……。


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