ナナと教授 | ナノ

暖炉の下で



集中しちゃうと、周りが全くといって良いほど見えなくなってしまうあの人。
とっても真面目で不器用だし、いつも不機嫌そうに眉間にシワを寄せてるけれど、本当は凄く優しい、心は暖炉みたいにあったかい人なのよ?
それを知っているのは、恋人である私だけ………。


そうでしょ?教授――――。




寒い冬のある夜。
暖炉の下で、私は読書に夢中。これは親友のジェニーが貸してくれた恋愛小説。読み出すまでは恋愛小説ってあんまりなぁ…、と思っていたのだけれど。
これが意外や意外。読み出すと止まらない。
何故なら、言うのも恥ずかしいんだけれど……主人公が片思いする人が、そっくりなの。
私の大好きな人に。


甘く、低い声とか。
黒髪で、瞳が黒い所とか。
普段は不機嫌だけれど、ふとした時に見せてくれるさりげない優しさとか。
キスをしたら、とってもうっとりとさせてくれるところとか。


私は、胸をときめかせてしまう。だってまるで、この物語の同じ事を、私が教授にされてるみたいに感じて。
頬が火照るのを感じる。だって今読んでいるお話の部分って……いわゆる、アレ、だった。



そう、濡れ場―――



教授と私は、年が離れているけれどりっぱな(?)恋人同士。勿論キスだってハグだって経験済みだった。
でも、今まさに小説で凄い展開になっているという……状況は、実はまだ未経験だったりする。
私だって恋する乙女。こんな想像、しない訳じゃない。
だって、大好きだから、シて欲しい。そう思っちゃうのは、イケナイことなのかな?

こんなこと、誰にも相談できないし。親友のジェニーにだって、教授と恋人同士だってことは話していないもの。
皆はどうしてるのかな。もう、経験しちゃったって子もいるらしい。自慢そうに話しているのをこの間、聞いてしまった。


そ、そんなことするわけ……!!


あまりな内容に、卒倒してしまって、親友に介抱されたっけ。

「ナナには、刺激が強すぎたわね〜…」

ジェニーが苦笑して言ってたっけ。
うーん…。けど、私にはかなり切実な問題なわけで。だってそういうコトに及ばないのは、教授がオトナだから、ってことでしょ?
きっと、我慢してくれてるんだよね?教授。私がまだコドモだから。オトナの階段を登るのは、きっとまだ早いって、そう思ってるんでしょ?


でも、いっつも額にキスだけじゃ、私、実は物足りないの…。
時々は、もっとオトナのキスもして欲しいの。
あの、ハロウィーンやクリスマスの時のように、耳元で、妖しく、そして甘く囁いてほしいの。



そんな乙女心、あなたは解ってくれるかしら?教授………。




*****




寒い夜だが、我輩の心は温かい。

何故ならば、我輩の部屋には、愛しい恋人のナナがいるからだ。
暖炉の近くに座り、頬を染めながら本を読んでいるようだ。こっそりと見たのだが。


愛らしい……。ちょこんと座り、本を読んでいるだけなのだが、ただ、それだけでも破壊的な可愛らしさだった。
何故あんなに可愛らしいのだろう、我輩の恋人は。
今日は、ピンクのセーターに、黒いスカートを着ているナナ。靴は、足元に脱いでしまっておる。

「だらしないかもしれないけど…私の国では、室内じゃ靴は履かないから…」

こうさせてね?と可愛らしく言われた台詞に、我輩は頷きながら、しかし、ときめく胸を抑えつけるのに必死だ。
なんて可愛らしい足なのだろう。小さくて、非常にととのっている。完璧な足先だった。我輩はソコにキスをしたいという衝動と、必死で戦った。我輩は足フェチではない。おそらくこれは、ナナだからだ。
お前の身体の一部だから、愛しくて仕方ないのだ。


あんなに無防備に投げ出して、冷えてしまうではないか。
暖炉の側だから、そんなことをしているのかね?ナナのその白い足先に、暖炉の炎が優しく灯され、艶めくような美しさを醸し出しているのに。

まさに、誘惑の風景。我輩は想像してしまう。




まず、あの足先にキスをするのだ。おそらく、ナナの足先は、暖炉の火に煽られて少し熱く感じられるかも知れぬ。
ナナはその黒い瞳を見開いて、驚くだろう。そうだろうな、我輩が突然に、何の前触れもなく、そのような行為に及んだのだから。
だがそれだけで止められるワケがない。
足先にキスをするのは手始めにすぎぬ。徐々に、膝、太もも、とキスをしながらナナを押し倒すのだ。

「あぁ……んっ……」

甘やかな声を上げながら、頬を染め、官能的な表情をするナナを眺めながら、我輩はスカートの中に手を入れ、そしてそこで―――、




バチンッ、と薪の爆ぜる音で、我輩は我に返った。



なんというきわどい妄想をしているのだろう、我輩は。手を伸ばせばすぐソコにそれはそれは美味しい我輩の大好物があるのだ。無理もない。

大好物だが、味わうことはできぬ。一度にはな。




少しずつ、噛み締めるように、味わうことしかできぬ。しかも全ては食べられぬ。肝心な部分は、卒業まではおあずけなのだ。

それがまた、我輩達の関係を危ういものにさせる。
全てを味わえぬのなら、せめて味見だけでも………。それがさらに渇きの原因になると解っていても、止めることはできぬ。

フ……暖炉の薪は、絶妙のタイミングで爆ぜたな。我輩は苦笑した。

さて、それでは味わうことにしようではないか。我輩の恋人を、ほんの少し、味見程度にな。
我輩は囁いた。もう仕事どころではない。



「ナナ、こちらへ来たまえ………」


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