ホグワーツ特急に乗る親友を見送り、部屋へ戻った私がしたこと、それはね、荷物をまとめることでした。
スーツケースに着替えと勉強道具を詰め込む。そうして私が向かう場所はただ一つ、大好きなあの人の元。
一緒に居残りになった生徒が不思議そうに私を見てきた。
「ねえ…君、何処へ行くのさ?そんな格好をして」
私はにっこりと微笑むと言った。
「内緒!けど、ダンブルドア校長の許可は貰ってあるから大丈夫なの」
「そう……」
教授のお部屋の扉に、ノックを3回。
返事があった後、私が部屋の中へ入ると、教授は目をこれでもかってくらい見開いてきた。
「そ、その格好はなんなのだ!」
私は自分の格好を見回す。いつもと変わりないけれど…。
首を傾げながら言った。
「セブルス?これ、普段着ですけれど……」
すると教授は目を逸らし、顔色の良い状態でぼそっと言った。
「そ、その……エプロンはなんなのだ……」
「え?ああ…これはですね、これからセブルスのお部屋を掃除して、クリスマスの飾りつけをするから、付けてきたんですよ」
「掃除?そのようなことは、不要だ……」
「だーめ!せっかくのイベントなんだから、お部屋を綺麗にして飾らなきゃ!それにこのままじゃあ、私が寝泊りするのも嫌です!」
「は?寝泊り?誰が、何処でするというのかね?」
「勿論、私が、ここ、セブルスのお部屋でするんです」
「!!!……お、お前は何を考えているのだ!そのようなことは、許可できん―――」
「クリスマスだもん……いいでしょ?ねぇ…セブ……お願い……良いって言って?」
「う…………可愛く迫っても駄目だ!こんなことが、校長に知れたら――」
「あ、その点はお気遣いなく。校長先生からは許可を貰ってありますよー」
私はそう言って、校長先生から貰った許可証を見せた。教授はひったくるようにその紙を私から奪うと、睨み付けながらその文字を目で追う。
そして深〜い溜め息。ブツブツと何かをつぶやいているみたい。
「くそっ……あの狸爺めッ………我輩をこのように苦しめて……。悶々とする所を見て、笑うつもりだな?……なんて嫌な爺なのだ!」
「???何か言いましたか?」
「いや……別に何も言っておらん…」
教授は深〜い溜め息を付くと私をチロリ見つめてきた。
ドキッとするその眼差し。教授は情熱を込めて私を見つめてくる。そうして甘い声で囁いてきた。
「恋人の部屋に自らノコノコとやって来るとはな……。ナナ…マチガイが起きる可能性を考えなかったのかね?」
私の身体は、教授のその熱い眼差しと、甘い囁きに蕩けそうになってしまう。私は顔を真っ赤にさせながら言った。
「だって……私、教授とずっと一緒に居たかったんだもの。いつも生徒の目もあるし、消灯までしか一緒に居られないし。けど、教授がどうしても嫌なら……私、寮に戻ります。確か男子学生が一人寮に残っていたから、その子と一緒に過ごすことにしますね」
しゅんとなりながら、荷物を持って出ようとした私。扉を開けようとしてノブを掴んだ。けれど扉は開かなかった。
気が付けばすぐ後ろに教授がいた。教授はその大きな手で、扉を押さえてしまっている。
教授はその低い声で、私の耳元に囁きかけてきた。
「寮になど、戻さぬ……。せっかくナナが我輩の部屋に自ら来てくれたのだ。休暇は此処で過ごしたまえ。聖夜を共に、祝おうではないか?ナナ……」
教授はそう言うと、私の首筋に手を這わせてくる。
「あ…っ…んっ……だめ…っ……」
私は身をよじってその愛撫から逃れようとした。けれど私のそんな行動は、教授にしたら亀みたいなものなんだろう。あっという間に私は、教授のその腕の中に囚われてしまう。
教授はクックッと笑うと、私に囁いてきた。
「また…歌でも歌うかね?ナナ……あの時のように……情熱的なデュエットを…我輩と一緒に……」
「セブルスの…エッチ……そうじゃなくって…クリスマスをお祝いするんでしょ?一緒に……」
「それも良いが……“一緒に”出来ることは……沢山ありますぞ?ナナ……」
教授は酷く甘い声でそう囁くと、全身が真っ赤になった私の体を反転させて、私を教授の正面に向かせた。そうして教授は、恥ずかしくて堪らなくなっている私の顔を、それはそれはじっくりと眺めてきた。
「我輩はクリスマスなど祝ったことはなかったが……可愛らしい恋人の願いだ、その願い、叶えて差し上げようではないか…。フフ…ナナ、君のご両親は、素晴らしいクリスマスプレゼントを我輩に下さったようだぞ?」
教授はそう言うと、ときめきで爆発しそうになっている私に、キスをしてきたのだった。
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