31 ストレートな攻撃 1
教授と手を繋ぎながら、ゆっくりとホグズミードを歩く。
まわりの風景なんて目に入らない。私の胸の鼓動は、強く、とても速くなっていた。
教授の横顔……。若い時から、かなり、整った顔立ちをしてる。大人の教授の面影があちこちにあって、私は、教授の横顔をじいっと見つめてしまった。
「ど――どうしたんだ」
教授、前を向いたままだ。なんだか…なんだか恥ずかしそう?
「どうしたって何が?」
「何故…そんなに僕の顔を見つめるんだ?」
なにかついているのか、と聞いてくる教授に、私はクスリと笑ってしまう。だってね…、
「見たいんだもの…セブの顔」
「な…っ……シズノお前な…」
教授は下を見てしまう。すると、教授のサラリとした髪が彼の表情を隠してしまった。あーあ。これじゃあ、教授がどんな表情をしているのかが見えないじゃない。
かっこいい教授のどんな顔も、見逃したくないのにな…。
「なぁに?セブ」
私の言葉に、教授はしばらく間を空けると言ってきた。
「いや、なんでもない……。ところでシズノ、どの店に行きたいんだ?」
教授から言われた言葉で、私は気がついた。
彼と一緒に行きたいあまり、どこの店を見たいかまで考えていなかったことに。やばい…どうしよう…?
「え〜〜っとぉ……」
必死にどの店にしたらいいか考えていると、教授が溜め息をついてきた。
「お前………さては、何も考えたなかったろう?」
図星だった。
「いやぁ、セブと一緒ならどこでも良かったから。店までは考えてなかったなー、なんて……」
正直にハハ、と笑いながらそう言ったら。
教授の顔が一瞬で真っ赤になったよ!
「な…な……な………」
「な?」
“な”ばっかり連呼されても。
あ、っていうかこれって……、
「セブ、ひょっとして照れてる?」
「う、うるさい馬鹿!」
ぐい、っと、教授の私を握る手の力が強くなる。とたんに歩くスピードも。
「わ!わわっ!セブ、歩くの速いよぉ〜」
「…ッ……お前がそんな事言うからだろう!」
雪がチラチラと舞う中、私と教授の掛け合いはお店に入るまで続いたのだった。
(まずい……胸がドキドキして破裂しそうだ……)
(教授って…子供の頃照れ屋さんだったんだな…)
(H25,08,26)