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 27 校長先生は千里眼



12月になった。私は元の世界に飛ばされることもなく、ホグワーツの生活に完全に馴染んでいた。


リリーとのあの、ガールズトークの後も、教授との関係は何の進展もなかった。放課後はいつも通り、家庭教師と生徒かというような勉強づくし。色気の欠片もない。

でも、教授がつきっきりで勉強を教えてくれたおかげで、授業に出ても居眠りはしなくなった。

やっぱり、基礎が出来てないとさ、どんなに面白そうな授業でも退屈なだけだからね。





クリスマスが近づくと、ホグズミードへ行く話でもちきりとなった。皆、あそこでクリスマスプレゼントを買うみたい。


私、あそこに行けるのかなぁ。よし、アルバスじいちゃんに聞いてみよう!



ある日の放課後、教授と別れた私は、校長先生の部屋へと向かった。
合言葉は大丈夫。来る前にマクゴナガル教授から確認してある。


ガーゴイルの前で私は言った。


「メープルキャンディー!」


するとゴゴゴッと音がして校長室への扉が現れる。
っていうか、メープルキャンディーってすっごく甘そう……。


部屋に入ると、校長先生がいた。机に向かって、何か書類を書いているみたい。
真っ赤な帽子をかぶっていて、まるでサンタさんみたいだった。


「シズノや、ちょっと待ってくれんかのぉ」

「勿論!忙しいのにごめんなさい、アルバスじいちゃん」

「なんのなんの!」


サラサラと、羽ペンが羊皮紙の上をすべるように動き回る。なんて書いているんだろう。校長先生の字は、達筆すぎてわからないな。


じっと見つめるのも失礼だと思った私は、余裕がなくて前回じっくりと見ることができなかった校長室の中を心ゆくまで眺めることができた。


横の飾り戸棚の中には、色々な分厚い本が並んでいる。その一番上には、クシャクシャになった組み分け帽子が置いてあった。どうやら眠っているみたい。

奥の止まり木はきっと、フォークス用だろう。今はどこかに出かけているみたいで、不在だった。残念!

反対の壁には、一面に歴代校長先生の絵が飾ってある。ほとんど皆、寝ていた。これだけ静かだったら、私だって寝ちゃうかもしれない。

後ろの階段は螺旋階段になっていて、ロフトのようになっていた。その先には天体望遠鏡のようなものが置いてあり、天井からは空が見えるようになっている。
素敵な作りになっていた。


「シズノ、待たせたのぉ」

気がつくと校長先生がキラキラした目で私を見ていた。
私は微笑むと挨拶をした。

「こんにちは、アルバスじいちゃん。突然連絡なく部屋に来てごめんなさい」

「なんの!構わんよ」

「それでね、アルバスじいちゃん…今日ここに来たのは、1つ、確認したいことがあって」

私がそう言うと、校長先生はヒゲを撫でながらいたずらっ子のような顔をして笑ってきた。

「シズノや、これをご覧」

そう言って杖を振ってきた。とたん、私の膝の上には突然、1枚の紙が現れた。
私は目を見開いてしまう。だってこれって…!

「これって、ホグズミードへの許可証…。凄い!どうしてわかったの?」

サイン欄には、校長先生の名前が書いてあった。校長先生は笑うと言ってきた。

「この時期じゃ、そろそろシズノが尋ねてくるだろうと思ってのぉ。準備をしておいたのじゃ」

用事はそれかの?と聞いてきた校長先生にうなづく。校長先生はニコニコと笑うと、もう一振り、杖を振ってきた。
すると私の膝の上には、可愛らしいカエルのがま口ポーチが現れた。お腹の部分がもっこりしていて、満腹、って感じのポーチだった。

「それはワシからのプレゼントじゃ。その中の物は好きに使うと良い。シズノや、それでホグズミードを楽しんでおいで」

「ありがとう、アルバスじいちゃん!」

私は、感激のあまり机の横から回り込んで、座っている校長先生に抱きついてしまった。
校長先生はヒゲを揺らして笑いながら優しく私を抱きしめ返してくれた。

「ワシのオススメは“ハニーデュークス”じゃ」




*****



部屋に戻って許可証を見てみる。ちゃんと、校長先生のサインがしてあった。
ということは、今週末、私もホグズミードへ行けるってことだよね!

教授を誘っちゃうもんね!



「やった〜!」


叫び声を上げると、ベッドへとダイブした。

私の頭の中は、これから教授と一緒にする予定の宿題のことじゃなくて、ホグズミードのことで一杯だったりするけれど、仕方ないよね?

だって、初めてのちゃんとしたデート、になるんだもんね。この間のお買い物は、デートとは言えないだろうし。

ただし、教授がOKしてくれたら、だけれども。


「どうやって誘おうかなぁ……」


カエル君ポーチのお腹を突っつきながら、私は一生懸命に誘い文句を考えだした。



(H25.03.31)



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