26 ガールズトーク 2
ど、どう思ってるって言わましても。
大好き…っていうか愛してる……ていうか。
自分の命よりも大切な人だし。
って……言っていいの?リリーに。
よりにもよって、教授の片思いの相手だし。
私がそんなこと言って、二人の仲がこじれたら……嫌だな。
だって、私は教授のこと、本当に大好きだから。
好きな気持ちを、強要したくはないの。
将来……両想いになれるんだし。
う〜んと悩みだした私に、リリーは呆れ顔だった。
「そんなに悩む事なの?シズノ……」
「いや、悩むっていうかなんていうか………」
返答が難しいんです。
そう言いたいけれど、言えないし。
仕方ないので誤魔化すことにした。こういう話はすりかえ作戦!
「そういうリリーはどうなの?」
「私?」
驚いた顔をするリリー。リリーって、教授のことどう思っているんだろう。
実はずっと気になってて。ひょっとしたら、メガネが猛攻する前までは、リリーは教授のことが好きだったのではないかと、ちょっと思っちゃったりしてたのだ。
リリー…なんて言うかなぁ……ドキドキ……。
しばらく視線を彷徨わせたリリーは、紅茶を一口飲んだ。そうしてその可愛らしい唇が開かれる。こぼれ出た言葉は―――、
「よく……わからないわ」
「……わからない、の?」
喉がカラカラだ。紅茶を一口飲んだ。あ、これアールグレイだ。おいしい…。
リリーは紅茶にミルクを足しだした。渦をつくりながら、紅茶とミルクが混ざり合う。その光景を、リリーはしばらくじっと見ていた。
「セブルスは私の幼馴染だもの。そんな風に、思ったことなんてないし……それに私、年上の方が好きかもしれないもの……」
衝撃の告白。リリーって年上好きだったんだ!
「へぇ〜そうなんだ……。じゃあ、す、好きな人とかいるの?」
誰だろうなぁ。ダンブルドア校長とかそういうオチは無しでお願いします。
ケーキーをぱくつきながら、リリーの答えを待つ。リリーは恥ずかしそうに頬を染めると、ぼそっと言った。衝撃の台詞を。
「誰にも言わない?」
「言わないよぉ。言う訳ない!!」
右手を挙げて誓った。リリーはテーブルクロスをいじっている。モジモジするリリーって可愛いっ
「ほんとに?」
「ほんとに!」
「笑わないでよ?」
「笑う訳ないじゃん……ねぇ、教えて〜」
「えっと………Mr,マルフォイ……って言ったら驚く?シズノ………」
……私の脳が壊れたのかしら。みすたーまるふぉいと聞こえました。
ミスターマルフォイ……ってルシウス・マルフォイ?!
「でえええっ?!マジで?!」
「マジよ」
「あの人……スリザリンじゃん……」
「そうね」
「それに……婚約者がいるんじゃ……」
「そうよね…」
ケーキのてっぺんに付いているストロベリーを口に放り込んだリリーは、しばらくモグモグと咀嚼した後、ぼそっと言ってきた。
「けど……完璧でしょ!あの容姿……声……洗練された物腰。まさに……“王子様”でしょ……」
リリーの瞳が夢見る乙女になってます。
「え〜……リリーにはもっと素敵な人がいると思うけどなぁ。マルフォイなんて好きになったら…不幸になりそうだよ?」
私がそう言ったら、リリーはびっくりした顔をしてきた。
「それ、どういう意味?」
だってさぁ……ルシウスっていっつも浮気してるよ?
スリザリンの御嬢様をとっかえひっかえ忙しい。いや、スリザリンだけじゃない。ハッフルパフとかレイブンクローの生徒とイチャイチャしているのを見たことがあった。
う〜ん……言うべきか…言わざるべきか……それが問題だ……。
腕を組んでウンウン言い出した私を見て、リリーは笑ってきた。
「シズノったら、何をしてるのよ。なぁに?そのポーズ」
「“考える人”じゃん。こうすると名案が浮かぶよ?」
「嘘でしょ?」
「ホントだよぉ。リリーもやってみて?」
「え〜?嫌よぉ」
「ほら、騙されたと思って!」
その後も二人できゃっきゃ言いながら楽しいひと時を過ごしたのだけど……でも、リリーの好きな人を聞いた時はマジ驚いたよね。
それに。
ルシウスって……絶対それ、ホントに好きじゃないんじゃないかなって思ったり。
憧れみたいなものかもしれないよね。リリーには言えなかったけれど。
その夜、部屋のベッドに入りながらそんなことを考えて一人で笑ってしまったり。
それにしても、とっさに誤魔化せて良かった。本当は、大声で叫びたいくらい教授のこと、大好きなんだけれども。
それを今言えないし……切ない…。
「ごめんね…教授……」
私はそう囁くと、杖を振って明かりを消した……。
(ああやって誤魔化すところをみると…やっぱりシズノはセブのことが好きなんじゃないかしら…?)
(H24,08,21)