あなたに逢いたくて | ナノ


 24 イケメンは積極的?



最近、教授の様子がおかしい。

私が何を話しかけても、ああ、だのうう、だのしか言わないし。
大好きな魔法薬学の授業でも上の空って感じ。あ、でも調合はね、ちゃんとやってるよ。さっすが教授!寝てても調合できそうね…。


勉強を教えてもらう以外、彼は何かと理由をつけてどこかへ行ってしまう。
私……まるで避けられているみたいじゃない…?


ひょっとして嫌われた、とか?




どうしよう…原因がありすぎてどれが決定打かわからない。

こっそり、教授のローブを1枚失敬したこと、ばれた、とか?
それともそれとも、この間、彼に黙って写真を撮ってもらったことがばれたのかしら。
その写真は今、私のポケットの中。彼に逢えない日は、写真の中の教授を見つめて、一人ニヤニヤしているのがばれたのなぁ。

それともそれとも――――。



「オマエ、そんなにスニベルスが好きなのか…」

誰も居ないと思ってたら、聞かれちゃってたみたい!慌てた私が後ろを振り向くと、そこには超呆れた顔をした、シリウス・ブラックがいたのでした。

「好きで悪い?」

それに彼、スニベルスじゃないわ。ちゃんと素敵な名前があるもの!
そう言って反論した私を見て、シリウスは肩を竦めてきた。

「いや……物好きだなぁと思ってよ」


むか。


「ほっといて!」

むきー!腹の立つ…ッ

ぷんすかしながらあっかんべーをした私をみたシリウスが吹き出してきた。

「なんだよそれ……オマエ、おもしれー奴だな」

今度は肩を震わせて笑ってるみたい。

「物好きとか、おもしれー奴とか言いたい放題言ってくれるわね?私……まだ忘れてないわよ?!」

杖を構えて戦闘態勢に入る。この間と同じ目に遭わせちゃうからね!
私が呪文を唱えてシリウスにお手をさせようとした時だった。一瞬早く、シリウスが杖を振ったのは。


「あっ…」

飛ばされていく杖。コイツ、腐っても腕は良いのね。

「同じ手に引っかかるかよ、小瓶ちゃん」

「小瓶ちゃんだなんて名前じゃないわ!私は―――」

「シズノ、だろ?可愛い名前だな……シズノ………」


シリウスが微笑んでくる。やだ…ちょっと勘弁してよ。


シリウスは、容姿だけみると凄く綺麗なのよね。かなりなイケメン。
当然ながら彼はモテモテだった。色んな女の子をとっかえひっかえしているのを見ているし。なんとスリザリンの上級生とも付き合ったことがあるとか。

私にしたら中身に難アリ、なのよね。教授とは雲泥の差ってヤツよ。


けど……容姿はすっごくカッコイイから、だからあんな風に見つめられるとドキドキしてきちゃう…。


早く寮に戻ろう!


そう考えた私は、城に向かって歩き出した。ところが―――。



「ちょっと待てよ……シズノ。俺の話は終わってないぜ」

「私は貴方と話すことなんてないわ。さようなら、シリウス・ブラック」

そう言って彼にさようならをしようとしたら、腕を掴まれた。


「離してよ…痛いわ……」


なんだか凄い力。それに……シリウスの顔は何故か真剣だった。


「何でだ?」

「え?」


腕を強く引っ張られ、無理矢理、身体を動かされてしまった。丁度シリウスと向かい合うような恰好にさせられてしまう。


「どうしてアイツばかり見つめる?アイツのことばかり考える?俺だって……俺だって……」

「シ…リウス…?」

彼の真剣な表情が、私を捉えて離さない。


待って…ちょっと待ってよ。

冗談じゃないわ。こんなことって有り得ない……。




「俺だってお前が好きなのに……!」


「!」



シリウスに抱きしめられた。ぎゅっと…力強く。


「冗談はやめて!」

「冗談なんかじゃねー……俺は……俺は、お前のことが……」



シリウスの顔がどんどん近づいてくる。
やだーーー!!!誰か助けて……。


「や、めて…ッ」




もう少しで唇が触れ合う……そんなの嫌!この唇は……教授だけを知っていたい。他の人となんて…絶対に、絶対に嫌!!

顔を背けたくても、シリウスの腕が私の頭をしっかりと押さえつけていて駄目だった。





助けて……助けて教授!!





次の瞬間――――、






バチィッ






鋭い閃光が迸り、気が付くとシリウスが飛ばされていた。そしてその先にいるのは、杖を構えた教授!!

うそ……見られた?!



「躾の悪い犬には、おしおきが必要だな……」


教授、すっごく怖い顔…。

シリウスが立ち上がる。その頬には、傷が出来ていた。



「スニベルス、お呼びじゃねーよお前なんか…」

「黙れ。お前のしたことはどんな言葉をもってしても正当化出来ないはずだ。……シズノ……来い」

教授のその声に、私は駆け出す。
彼の元へ……一直線に。

抱きついても、今日の教授は何故か私を引き剥がさなかった。それどころか、空いている方の手で、私を優しく抱きしめ返してくれた。


「シズノ…怪我はないか?」

「ううん、大丈夫だよ。セブが助けてくれたから…」

「そうか……良かった…。寮にいないから心配したぞ。シズノに何かあったら……と思うと僕は……」


き、教授……何を言ってるんですか?!

なんか教授の口からカッコイイ台詞がバンバン出てくるんですけどッ


「セブ……?」

「あ……いや…と、とにかくお前が無事で良かった…。さ、寮に戻ろう。宿題がまだだったろう?」


一瞬で、甘い雰囲気がどっかに飛んでったよ。
宿題って……そんなぁ……。今、かなり良い雰囲気だったはずなのにぃ!!


「宿題ってそんなぁ……」

「ちゃんとやらないと…明日は宿題を二倍にしてやる」

「ひーんそんなの嫌……セブのスパルタ…」

「シズノのためを思ってだ」

「わーんセブのオニ〜……」



口ではそんなことを言いながら、でも、つないだ手は優しい。
教授……どうしようドキドキしてるよ。



「セブ…助けてくれてありがと…」

「……………ああ」




(俺のことは完全無視かよ……)


(H24,07,22)



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