20 心の痛み
初めて見た時から、可愛らしい子だと思った。
それが、僕の第一印象。
シリウスが何故かこの子に絡む。シズノは可愛いからね、仕方ない。
それに何故か、彼女はスネイプにべったりだ。同じ寮なんだからしょうがない、とは思うけれど。
なんでスネイプなんだろう。
編入生はちょっと変わった趣味の持ち主らしいということは、すぐに生徒達に広まった。
スネイプにべったりなのは、誰が見ても明らかなことだったから。
ジェームズもそれを見て、面白そうな顔をしてた。シリウスは面白くなさそう。僕も……正直に言うと面白くない。
あれじゃ、僕が入り込む隙なんてこれっぽっちもないだろうから。
どうしてこんなに気になるんだろう。やっぱり人種が違うからなのかな。
遥か前をスネイプと連れだって歩くシズノの流れるような黒髪を見ながら、そんなことをぼんやり考える。
シリウスが話しかけてきた。
「リーマス、お前どっか具合悪いのか?」
「え?何処も具合悪くないけど。なんでそんなこと聞くの?」
シリウスを見ると、彼は変な顔をしていた。
ハンサムな顔をしているのに、彼の表情は酷く人間臭い。凄くしかめっ面だった。
「だってよぉ…お前、どっか痛そうな顔してるぜ?」
痛い…顔?
痛い所なんてないはず…身体には。
まだ、満月まで日があるし、体調は悪くないはずなんだけど。
僕は頬に手をやった。笑いながら言った。
「痛い所なんてないよ?変なシリウス」
「変で悪かったなッ!!」
シリウスは僕の言葉にムスッとした顔をして、ずんずんと歩いて行ってしまった。案の定怒らせた。でも、それでいい。シリウスは時に鋭いからね。
僕、笑えていたかな?
ちゃんと、ごまかせたかな?
痛い所なんてないなんて嘘だ。本当は、痛くて痛くて堪らない場所がある。
けどそれは、誰にも言えない。
僕は、人を好きになっちゃいけないんだ。
何故なら、きっとその子が不幸になるから。僕のせいで、不幸になるから。
だから、彼女がスネイプのことが好きなら、それを祝福してあげなきゃ。応援してあげなきゃ。
彼女は決して、僕の物にはならないけど、幸せにはしてあげられるはず。
僕はひとり、そっと胸を押さえる。
心にも効く薬というのは、さすがのマダム・ポンプリーでも持ってないよね…。
でも、この病気の良い所って、見た目には解らないし、隠すことも出来るから大丈夫。
僕は一人苦笑すると、気持ちを切り替えてシリウスを追いかけることにした。
彼は早速、スネイプとシズノの邪魔をしに行ったからね。
……シリウスみたいに素直になれたらいいけど、僕は僕のやり方で、シズノを愛すことにしよう。
(H24,1,23)