18 慣れてないんだ
寮へと戻る途中、リリーと話をした私。
彼女は本で書いてあった通り、素晴らしい女性だった。
とっても優しいし、綺麗だし…話していても、楽しかった。
私、完全に負けてるわ………。
「どうした?」
教授が聞いてきた。私の元気がないので、心配してくれてるんだ。教授って本当に優しい。
恰好良いし。モテるんだろうか……。
「ねぇ…セブってさ……」
「なんだ?」
やっぱり我慢できない。言っちゃうもんね!!
「モテるの?」
「ば…ッ…お、お前、何言って………」
口をパクパクさせている教授は、なんだかとっても可愛いい。
私は言った。自分が普段から思っている教授の素晴らしさを。
「だって…セブってば、優しいし。頭だって良いし、真っ黒な髪も、瞳も綺麗だし……スタイルだって良いし――」
将来は声だってセクシーになるんだよ〜…と心の中で付け加える。
すると教授の顔がどんどん良くなってきた。わー…真っ赤だ。
「セブ…顔、赤いよ?」
「お前のせいだ馬鹿!!」
教授はそう言い捨てると、談話室から出て行ってしまう。
「待ってよぉ〜…セブ、なんで怒ってるの?」
「怒ってない!!」
「だって怖い顔してる……」
「これは…もう黙れ!食事に行くぞ……」
教授、溜め息ついちゃった。
私は小走りで教授について行きながら言った。
「だって…セブは恰好良いもん……」
「……………」
大広間に行って、席に着いた後も、教授は何故か私の方を見てくれなかった。
ずーっと髪の毛で顔を隠してしまって、私の方を頑なに見ようとしない。やっぱり怒っちゃったのかなぁ…。
しゅーんとしながら、お皿を見る。心なしかお皿にのっているサラダも、元気がないみたい。
ぽそぽそと食事をしていたら、教授の盛大な溜息が。
「シズノ、怒ってないから…そんな顔するな」
「セブ…なんかわかんないけど…ごめんね……」
フォークを置くと、私は教授のローブをそっと掴んだ。
教授に嫌われたら、私、生きていけないよ………。
(僕は……リリーが好きなはずなのに…なのになんでこんなにもシズノのことが気になるんだ…?)
(嫌われたくない…。教授にだけは、嫌われたくないの……)
(H24,1,6)