17 恋敵、登場?
「可愛らしい御嬢さんだね、これがあの噂の編入生かな…?」
メガネ、もといジェームズがニコニコ笑いながら私に迫ってきた。
すると教授がさりげなく、私の前に立ちはだかってくれた。き、教授ってば……恰好良い!
ひょろひょろのモヤシみたいに見えるけど、こういうとこはやっぱり、紳士なんだわ……素敵です、教授!!
「近すぎる。もっと離れろ……」
「フ……ナイト気取りとは笑わせるね。スニベルスちゃん、恰好良いとこ見せてるのかな?」
ジェームズがからかう。すると教授は顔色を良くしながら、反論した。
「う、うるさい!」
「はっは〜…顔、真っ赤だよ?」
「………行こう、シズノ」
溜め息をつくと、教授は私を促してきた。ジェームズとやり合っても不毛だってことが解ってるのよね。私もそう思うもの。
だから私は頷いて、腰を上げた。そろそろ夕暮れだ。寮に戻って宿題しなきゃだし。
「わかったわ…」
「おや、もうお帰りで?」
「そうね……どうやらお邪魔虫がやって来たみたいだから、今日はもう寮に戻ることにするわ」
するとジェームズはおや、という顔をしてきた。
「僕がお邪魔虫だと言うのかい?」
私は肩を竦めた。
「自覚、無い訳?」
「全く」
ニコニコしながら私に返答してきたその言葉に、思わずげんなりする。
教授は溜め息をつくと、ぼそっと言った。
「止めるんだシズノ。ソイツと話をしても無駄だぞ」
「どうして…?」
「言語が通じないんだ。言った言葉が一切伝わらない。おそらく頭の構造がいかれてるんだろう」
「そうなの…。箒で飛びすぎて、脳みそ、どっかに落としてきたんじゃ…?」
私の言葉に、教授が吹き出した。肩を震わせて笑ってる。
「どっかに落とした、か……それは的確な表現だな」
「失礼じゃないか?君達………」
ジェームズがムッとした顔で反論してきた。それに答えようとして私が口を開きかけた時―――、
「もう、ジェームズったら、こんな所で油を売ってたのね!スラグホーン教授がお呼びよ?」
後ろの方から、女性の声が聞こえてきた。
鈴を鳴らしたような、可愛らしい声。ひょっとしてこの声は………、
「麗しのリリーじゃないか!僕を探してきてくれるとは……ついに、僕に愛の告白を――」
「馬鹿言ってないで、さっさと教授の所に行って頂戴。これ以上減点されちゃ、たまらないわ」
ふつーに返したよ。ジェームズのラブアタックを。
リリーはにっこりと私達に笑いかけると言った。
「セブルス…久しぶりね!そしてお隣にいる子が、編入生でしょ?私に紹介してくれないの?セブルス……」
緑色の瞳がキラキラと輝いている。
赤毛…綺麗な色。すっごく可愛いらしい。
そう、私達の目の前には、あの、リリー・エバンズがにっこりと笑いかけながら立っていたのでした。
「あ、ああ……リリー、こちらはシズノ・ニイザキ。日本からの編入生だ。
シズノ……、こちらはリリー・エバンズ。グリフィンドール生で、僕らと同い年だ」
「よろしくね!シズノ…」
私に笑顔を向けながら、リリーが握手してくる。
私はドキドキしながら、握手を返した。
「よろしくお願いします…エバンズさん」
「あら、リリーで良いのよ?」
「リリー…よろしく。私のことはシズノと、呼んでください……」
「シズノ、ね!よろしくね、シズノ…」
この人が、教授の初恋の人……。
わかっていたことだけど、すっごく可愛らしい。教授とお似合いかも。
教授が恋しちゃうのもわかるくらい、女子力のある人だった。
風がふいてきて、リリーの髪が揺れた。とたん、ほのかに香るこの香りは……百合の香り?
「リリーと握手出来るなんて!!シズノ……君がうらやましいよ」
ジェームズがマジ顔でそんな台詞を言ってきた。
「あなたの分の夕食、取っておくの止めようかしら……」
リリーが平然とそんなことを言ってきた。
ジェームズはしょうがないな、という顔をすると、
「わかったよ、お姫様。これから懲罰なんだ。夜までかかるから…またね!小瓶ちゃん…」
そう言うとジェームズは名残惜しそうにリリーを見つめ、私に微笑んで去って行った。
………小瓶ちゃんって、何それ。
(私達も寮に戻りましょ?)
(小瓶ちゃんって…)
(シズノ、君を形容したんだろう)
(私…瓶に見えるの?)
(違うわよ!綺麗な小瓶みたいに、可愛らしいってことでしょ?)
(ほ、褒められたの…ひょっとして…)
(ああ、どうやらそうらしい。ポッターの奴、口が達者だからな…)
(H23,12,30)