あなたに逢いたくて | ナノ


 15 恋しくて



低い声が、私の名を呼んだ。


「シズノ……」


私は、嬉しくて、胸がドキドキして、貴方を見つめた。
すると、視界が遮られて、私は抱きしめられる。

「シズノ…愛している……」

囁くようなその声に、私のこの胸のトキメキは加速するばかり。

唇が触れ合うまで、あと少し―――





「―――――い、おい、シズノ…こんなところで寝るな」

揺さぶられて目覚めた私の視界には、教授がいた。
眉間にシワを寄せているその表情は、同じなのに……貴方は貴方なのに、違う……。

抱きしめてくれたあの感触も、鼓膜を震わせたあの声も、香りも憶えてるのに。

「うっ…ひっく……」

泣きたい。貴方に逢いたい。教授……いつになったら貴方に逢えるの?
切なくなって止まらなくて、泣きだした私に、教授はあたふたと慌てだした。

「な、泣くほど起こされるのが嫌だったのか……す、すまない……」

「ち、違うの……ごめんなさい…」

誤解させてしまった。貴方は何も悪くないのに…。

泣き止もうとしても、涙が止まらない。あんな夢を見た後は、いつも泣いてしまう。
あの温もりが、酷く恋しくて―――。


涙を拭う私を見ていた教授は、しばらくためらっていたけど、突然、私をぐいっと引っ張ってきた。

「せ、セブ…ッ」

「しゃべるな」

小さな声。教授は私の髪の毛を撫でる。ゆっくりと、慣れない手つきで。

「泣きたい時は、泣けばいい。我慢するな…シズノ……」



その不器用な優しさは、貴方を思い出させた。
私は……我慢できなかった。セブルス……貴方のその優しさ、変わらないね……。


「うううっ……セブルス…ッ…」

「ああ……」

「寂しいよ……ッ…ひっく……逢いたい…よぉッ…」

「シズノ……」




*****




「落ち着いたか?」

グズグズと鼻を啜っていたら、教授がティッシュをくれた。
すびーっと鼻をかむ。大好きな人の前で、醜態を晒してしまった。穴を掘って埋まりたい、今すぐ。

「う、うん。ご、ごめんねセブ……」

教授はあさっての方向を見ながら早口で言ってきた。

「気にするな。泣きたい時は……僕を呼べばいい。胸くらい貸してやる」

「セブ……」

マジマジと彼を見つめると、その視線を感じたのか、彼の頬がピンク色に染まった。
か、可愛い教授……照れてるんだ…。

「な、泣き止んだのなら大広間へ行くぞ。夕食が終わる」

そう言うと教授はさっさと談話室から出て行こうとした。慌てて追いかける私。

「あ…待ってよぉ〜」

「早くしろ、置いてくぞ」

「待って〜」


そんな台詞を言いながら、扉を開けて待っていてくれる貴方はやっぱり優しくて。
未来の貴方に逢えなくても、今貴方は確かにここに、私の隣に存在しているんだ。
だから、泣くのは止めよう。私は教授に笑いかけた。


「セブ……ありがと…」

「フン……」



不器用な貴方のその優しさ……大好きよ……。



(逢いたい…とは誰に、なんだ?ひょっとして…)
(教授…泣いたりしてごめんね)

(H23,11,25)



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