13 さりげなく優しい
案内された部屋は一人部屋だった。どうやら一人だけあぶれたらしい。けど良かった。いくらなんでも年の離れた子達と共同生活は勘弁してほしかった。なにより、いつボロが出るかわからないものね。
私は天蓋つきベットに倒れこんだ。わ〜フカフカだぁ!
明日から、ホグワーツの生徒だなんて信じられない。
大好きなセブと、ドキドキ☆学生ライフが待っているのかと思うと、胸がときめいてくる。
だって、ずうっと夢見ていたんだもの。もう一度、貴方に出逢える日を。
貴方が大人だろうが、子供だろうが構わないの。私が愛しているのは、貴方ただ一人なんだから。
『教授、大好きよ……』
そう呟き、私はそっと目を閉じたのでした。
*****
授業はやっぱりというか当然というか難しいものだった。いきなり3年生の授業を受けるんだから当たり前。しかも、普通の学校じゃないし。
変身術なんてもう完璧に基礎なんて終わってるし、魔法薬学だってそう。
あ、薬草学はなんとかなりそうな感じ。呪文学とか、ルーン文字とか…占い学とかも、努力すればなんとかなるって、手ごたえは一応あった。
ある日突然こっちにトリップしたから、また突然トリップする危険があったけれども、そういった予兆のようなものはなかった。今のところ……。
あ、そうそう、トリップを繰り返してあることに私は気が付いた。
最初は、俺様野郎に呼ばれ、トリップしたと思う。その時、私は何かの呪文に攻撃され、突き飛ばされ、結果、後ろ向きにエスカレーターへ落ちたらしい。
で、元の世界に帰る時は、動く階段から落ちた。というか足を踏み外したのだけれど。
そして今回は、大学の構内で急いでいて、階段を下りようとした時、足がもつれて階段から落ちたんだよね。あの時持っていた筆記用具とか鞄とかはどっかに行っちゃってないのだけれども。
そこから導き出される仮説は一つ。
私、落っこちるとトリップするのかも……?
しかも、二回目にトリップした時は、落っこちながら、あの俺様野郎の声を聞いたような気がして。きっと私のトリップには、俺様野郎が関係しているのかもしれない。
けど、私なんて呼んで何の意味があるのかしら…。絶対に誰か別の人と間違っているような気がするんだけれども。
でも、俺様野郎に「人違いですよ」なんてて言えないしねぇ。
そんなことをつらつらと考えながら歩いていたら、私は、またもや階段から落ちた。
「きゃっ!」
「シズノ!」
教授がとっさに呪文を唱えてくれたので、私は衝撃を感じずに済んだ。あれ、便利な呪文ね?今度教授に教えてもらおうっと。
「何をしてる。気をつけろと言っただろう!」
「う、うん…ごめんねセブ…ありがとう…」
教授が呆れた顔をしてる。仕方ないかも。だって初めてじゃないものね。私が教授に助けてもらうのって。
「この間も階段から落ちそうになっていたな…。シズノ、めまいでもするのか?」
教授の声、心配そう。首を傾げながら私に話しかける教授の顔は、ちょっと心配そうだった。首を動かすと、髪の毛がサラリと音をたててなびくのがわかった。
教授って子供の頃から萌えキャラだよね!恰好良いなぁ……。
「シズノ……?」
あ、眉間にシワが出来てる。こんな子供の頃からシワが出来てるんだから、大人になってから見た、彼のあの眉間のシワは、形状記憶合金なんだわ…。
あ、そんなこと考えてる場合じゃなかった。
「ごめんねセブ、ぼーっとしちゃってた。さ、図書室へ行こ!私に勉強教えてくれるんでしょ?」
私の言葉に、彼は頷いてきた。
「特に変身術と魔法薬学は壊滅的だからな…。基礎からやらないと駄目だろう」
「ごめんね、セブの勉強時間取っちゃって」
なんか申し訳ない。私がどうやってトリップしたかなんて今どうだっていいや。
それに眉間のシワとかについて考えている暇ないんだった。
「構わない。僕も復習になるから丁度良いんだ」
なんていい子なんだろう。あ〜ん教授大好き!
「わっ!!き、急に抱きつくな!」
「だって嬉しくて……ありがとセブ…」
「は、離せ……」
「んーもうちょっと……」
「…………はぁ」
教授が呆れてるみたい。けど、嬉しいんだもん。
『教授…大好きよ……』
「?なんだ?」
「なんでもないの…。さ、行きましょ、セブ」
「あぁ」
そう言うと私達は並んで歩きだした。
これから図書室でラブラブ☆お勉強会だもんね。楽しみだなぁ……。
(H23,08,27)