18 まっさかさまに
夢のような毎日は、過ぎ去るのが早いものって言うけど、本当かも。
私は、教授の腕に抱かれながら、そんなことを思っていた。
今は学期前だから、生徒はここ、ホグワーツにはいないみたい。
先生方も、心なしかゆったりとしているように見受けられた。
私は、萌えっぱなしの毎日。
だって凄いと思わない?!
教授の生調合、見られるなんて思わなかったし。
教授の調合した薬を飲める日が来るとは、思わなかったものね。
それに、教授は意外とお茶目さんだってことも、気がつかなかったわ、今までは。
照れると、顔色が良くなる所とか。
嬉しいと、絶対に私とは視線を合わせず、下を向いてぼそってこう言うの。
「そ…そうか…。我輩は、シズノがよければそれで良い」
二人きりの時は、甘い毎日を過ごしたし。
教授は、私が甘えるととっても嬉しそうな顔をするのよ?それがまた私の胸をきゅーんとときめかせるんだけど。
教授、その顔は反則よ……。
教授に初めて抱かれてから、ああいったコトに及んではいない私達。
けど教授は私を抱きしめてくれたり、愛しげに見つめてくれたり、情熱的にキスをしてくれるの。
夜眠るときは、勿論一つのベットで一緒に寝ている。
私を抱きしめて寝たりなんかしたら肩が懲りそうだなぁ。そう思った私が教授にそう言ったら、教授は口元をへの字に曲げてこう言ってきた。
「我輩のシズノが、盗られたら大変ですからな」
「えぇ?!一体、誰が盗るのよ?」
「わからん…。わからないからこそ、我輩も慎重になるのだ、シズノ…」
教授はそう言うと私をぎゅっと抱きしめてきた。そうして囁いてくる。
「どこにも行くな、シズノ…。ずっと、我輩の側にいてくれ…」
そんなに切ない声を出さないでほしい。私の胸がきゅーんとなってしまうじゃない。
私は教授に縋りつきながら囁き返す。
「どこにも行かないよ。私の居場所は、セブルス、貴方の隣りでしょ?」
「当たり前だ。どこへもやらぬ。お前は、我輩のモノだ。そうであろう?」
「うん、そうだよ…。私の身も、心も、すべてあなたのもの…」
「シズノ……」
「セブルス……キス、して…?」
「フ……言われなくともそうするつもりですぞ…」
教授は酷く甘い声でそう言うと、私にキスをしてきたのだった。
そんな感じで毎日いちゃいちゃして過ごしていた私。
そろそろ、学期が終わり、生徒がここホグワーツにやって来るらしい。
ダンブルドア校長にこれからのことを相談しに行ったほうが良いのではないかと思った私は、教授に許可をもらい(しぶしぶって感じだった)、校長室へと向かっていたのだけれど―――。
動く階段を登っていた時、悲劇は起きた。
ゴーストに見とれていた私が完全にいけなかったのだけど、なんと、階段を踏み外してしまったのだった。ドジすぎるだろって話だけどね。
すかっ、って感触があったと思ったら、私はまっさかさま。
「ぎぃやぁぁぁぁぁ〜!!!」
乙女らしからぬ大声を上げて、私はまっさかさまに落ちていく。
死ぬ!これ絶対死ぬからっ!!
意識を失う最期の瞬間に私が考えていたことは、教授のことだった。
ごめん、教授…。また迷惑かけちゃう――――
*****
「ですから、それはこちらの責任ではないと思いますが―――」
「そんなこと言ったって!現にシズノの意識は戻らないでしょ!早く救急車を呼んで頂戴!!」
「もう少しで、到着するはずですから―――」
うっさい。
私の周りでガヤガヤと。静かにしろっての!
私は目を開けた。
「う……ん……」
すると正面に見えたのは、懐かしい親友の顔………?
遅れてきた親友、リカががばっと抱きついてきた。
「よ、良かった〜!シズノったら、ずっと意識がもどらないから…さすがに駄目かと思ったよ!本当に良かった〜!!」
これは……これはひょっとしてひょっとしなくってもアレかしら……?
私、戻っちゃったの?!
(H22,12,17)