17 ゆびきり
甘い痛みに、私は思い出してしまう。
教授に愛された事を―――。
今、教授は用事がある、とのことでお出掛けするんだって。
私は、次の日もベットから出る事ができなかった。激しかったもんね、昨日は……。
教授は本当に申し訳なさそうに謝ってきた。
「シズノ、すまない…」
こんなにしゅんとしている教授を見るのは初めてかも。
っていうか、教授はもっとふてぶてしくって、尊大で、嫌味っぽかったはずだけど。
主にハリーにだけどね。
絶対謝ったりする人じゃないと思ってた。私は驚いてしまった。
「そんな顔しないで…。今は、もう大丈夫だから、ね…?」
「しかし、まだ痛むのであろう?今日は安静にしていたまえ。我輩が後で、薬を調合しよう…」
教授は優しくそう言うと、私の頬を撫で、そっとキスをしてきた。
キスは好き…。
だって、大好きな人とするキスだよ?とってもうっとりとしちゃう。
私もキスを返す。
何度も、何度もついばむように、そして、徐々に深くなってくるキス。教授が私の身体を抱きしめてくる。
私も教授の身体に腕を廻して、教授を抱きしめる。
「んんっ……」
キスをしながら、教授は私の身体を撫でてくる。それだけで、昨日愛された、行為の一部始終を思い出してしまい、胸が妖しくときめいてしまう。
「あぁ…ッ……だめぇ…」
「すまない…つい……」
切なく疼きだした身体の熱を吐息で逃がすと、私は教授を見つめた。
すると教授は溜め息を付いて、私の目を片手で覆ってしまう。
「誘惑するな……シズノ…」
私は切なく囁く。
「セブルスが…したくせに……」
「………安静だ。安静にしたまえ」
教授は顔を背けるとそう言った。そうして立ち上がると私に言ってきた。
「我輩は用事があるのでしばし部屋から出るが……シズノ、お前はこの部屋から出ぬように。安静にするのだぞ?」
そんなに心配しなくてもいいのに。私、小さな子供じゃないし。
私は苦笑すると教授に言った。
「わかってます。大丈夫だよセブルス、用事、済ませてきて?待ってるから……」
「……ッ……約束ですぞ?」
「うん、約束…ね?」
私はそう言うと、教授の小指に自分の小指を絡ませた。
「?何をしているのだね?」
あ、これは日本の風習なのかな?私は教授に言った。
「これはねぇ、日本の風習なんだけれど、“ゆびきりげんまん”って言うんだ!」
「ユビキリゲン…?」
「“ゆびきりげんまん!”約束を違えないようにこうやって……」
私はそういいながら節をつけて教授に言った。
『ゆびきりげんまん嘘ついたら針千本飲ーます、ゆびきった♪』
教授は不思議な顔をしてた。
「すぐ戻るゆえ…寝ていたまえ」
そう言うと、教授は部屋から出て行った。
私は、小指を見つめた。こんなこと、子供っぽかったかなぁ?
ベットで寝返りを打ちながら、深呼吸をする。
ベットからは、教授の香りがした。
たとえ側にいなくても、教授が側にいるみたい―――。
私は甘い吐息をつくと、目を閉じた。
『教授…だいすき……』
(H22,12,12)