13 私の行き先
背中とかもうありとあらゆる場所から冷や汗が5リットルくらい流れたんじゃないだろうか。
それっくらいの衝撃だった。
けどおかしくない?
どうして、“私”なの?
自分でいうのもなんだけど、私は平凡な学生だよ?
特別な才能なんて何にもない、ごく普通の、教授のことが大好きな、マグルの人間。
それを卿が欲しがるなんて……なんか変だ。そう、凄ーく変だ!!
(何か……理由があるんだろうか。わからない…)
私は、足元を見つめた。
どうやって、私がこの世界に飛んできたか…言わなければならないだろうか。
二度も、俺様野郎に飛ばされた、なんて言った日には、間違いなく最重要人物に祭り上げられそう。
魔法省とかに連れてかれて、教授と離れ離れになりそう。なによりもすっごく心配かけちゃいそう。
だって、気絶したくらいで抱っこしてくるんだもんね、教授ってば。
自分自身、理由のわからない状態で、全てを話すことに対してためらいもあった。
……決めた。もうちょっと、はっきりとしてから話そう。
ごめんね?教授、ダンブルドア校長。
私がそんなことを考えて自己完結していたら、ダンブルドア校長が聞いてきた。
「それで、シズノ、今回はどうやって飛ばされたのじゃ?憶えておるかの?」
私は校長先生を見つめると話し出した。ある程度は話そう。だって嘘じゃないでしょ?全部を話さないだけ……。
そこの人、屁理屈とか言わないよーに。
「はい。ええと、あの日、私は映画館にいて――――」
校長先生の部屋でかなりの長居をしてしまった私達。
教授の部屋へと帰りがてら、教授は私を心配そうに見つめてくる。またしても手を握りながらだ。
教授ってば本当に大胆。なんか新鮮だなぁ。教授って実はこんな積極的なヒトだったんだね。
「シズノ……、大丈夫かね?」
心配そうな、教授の声。私は微笑むと教授に返事をする。
「大丈夫。ありがとうセブルス……優しいね…」
私の言葉に、教授は顔を背けてしまう。
けれど私はしっかりばっちり見てしまった。
教授の頬がほんのりと赤く染まっているのを。
「わ、我輩は優しくなどない」
「そんなことないよ?とっても優しいよ…。優しくて、可愛いじゃん…」
「う……どこの世界に、いい年をした男に可愛いだの、優しいだの言う奴がおるのだ…」
「えへへ……ここに居るよ!」
「お前という奴は………覚悟したまえ」
「へ?何を……?」
「フン、我輩を煽った代償は大きいですぞ……」
「代償?なにそれ…」
「ククク………夜はこれからだ、シズノ……」
「ちょ……ちょっとお待ち下さい!なにさらっと問題発言言ってるんですか教授さん!ここ、学校ですけど…」
「そうですな。そして、我輩は成人した大人。隣りには、可愛らしい恋人がいる。我輩が長年待ち望んだ、愛しい恋人がな……」
「わわわ〜ちょっと待ってってば!あなたは教師!ここは学校で私は生徒でしょお?!ナニをしようとしてるんですかあなたは!」
「さぁ、何でしょうなぁ?なんにせよ、非常に楽しみである事には、違いない…。そら、着いたぞ、シズノ…」
何なのその意味深な台詞!チラリと見つめてくる、艶のある視線。とってもセクシーなその声。
私、それだけでもうヤラレちゃいそうなんですけどっ!!!
教授は部屋の扉を開けながら私を見つめてくる。その燃えるような視線は、私の身体をおかしなくらいときめかせた。
「我輩はもう1秒だって待てぬ。さぁ、こちらへ…シズノ…。お前の行き先は、もう決まっておろう?」
なんなの?!
なんなんですかその胸キュンな台詞はっ!!私の心臓、破裂しそうなんですけどっ!
「い、行き先って何処なの―――?」
話している途中で、私は突然引き寄せられた。
気がつくと私は教授の腕の中。あの、うっとりするような感覚に、私の思考は捉えられてしまう。
教授はとってもセクシーに囁いてきた。
「我輩の腕の中だ、シズノ…」
そう言って教授は扉を閉めてしまった―――。
(H22,12,05)