12 きっかけは偶然じゃない?
校長室に、沈黙が満ちた。
嘘のような話だけれど、認めるしかないのかも。
私は紅茶を一口飲むと、校長先生に言った。
「それから、私は―――?」
すると校長先生はニコニコと笑いながら言ってきた。
「ワシの部屋で組み分けをしたのじゃ!すると、なかなか時間がかかったのじゃがの、なんとスリザリンに決まったのじゃ!だから今シズノが着ている制服が――」
「スリザリンのネクタイだということなんですね」
「うむ、そうじゃ。セブルスがシズノの面倒を見ていたようじゃのぉ。気になる存在が、好きになるまではあっという間だったようじゃな☆」
ムフフ、という変な笑い声を上げながら、校長先生は教授をチラリと見た。
……あ、教授の眉間のシワがえらいことに…!!
「校長………話が脱線していますぞ………」
声にドスがこもっていた。
怖っ!!
でも、私としては教授といつから恋人同士になれたのか、その辺の馴れ初めの方が気になるんですけどぉ。
そんなこと、教授のあの状態じゃ聞けないけど。要するに一色触発って感じだから。
すると校長は髭を撫でながらフォッフォッと笑ってきた。
「まあまあ、そう怒るでないセブルスよ……」
「怒るのは当然だと、思われますが…?」
「ほっほっほ……。それからのシズノは急に世界を越えて来たとは思えないほど、楽しそうに生活していたのじゃ。寮を超え、色々な生徒と仲良くなっておったな。
ワシとしても、何故突然、こちらの世界にやって来たのか、調べてみたのじゃが…解らなんだ…」
わわ、急に話がシリアスになってきたよ。いつの間にか、教授も不機嫌オーラを消し、真面目な顔をしていた。
どうしてかは、校長先生でも解らなかったんだ…。前回(というか私にしたら2回目だと思うけど)はどうやってやって来たんだろ?
不思議に思った私は、校長先生に聞いてみる事にした。だってそこから何かのヒントがあるかもしれないじゃない?
「あのぉ〜…ちょっと、聞きたい事があるのですが…」
「ん?何じゃ?」
校長先生は私に顔を向けてきた。私はちょっと躊躇ったけれど、言ってみた。
「私、どうやってこの世界に来たって言っていましたか?きっかけとか、何かを言っていませんでしたか?」
すると校長先生は首を振ってきた。非常に残念そうに。
「それは、シズノも解らないと言っておった。気がついたら、この世界にいたと…。しかしなにやら気になる言葉を話しておったようじゃが…ワシにはよく解らなかったのぉ」
「気になる言葉?」
私、一体何を言ったんだろ?
思わず聞き返した私に、校長先生は髭をしばらく撫で撫でしながら思案していたみたい。う〜む、と唸り、眉根を寄せると、こう言ってきた。
「ウチュウジン…だの、ツルッパゲ、だの言っておったな、確か…。発音が違うかもしれぬが…ワシが聞き取れたのはその言葉だけじゃ」
「……そ、そうですか……」
自分の両脇から、大量に汗が出てくるのを感じた。
だってそれって、それってやっぱりアイツ?!
急に顔色が悪くなった私に気がついたのか、教授が聞いてきた。
「心当たりがあるのかね?」
はい、大有りです!とはさすがに言えない。
私は速攻で首をブンブンと振っておいた。
だって言えるはずがないでしょ。
ボスキャラに2回も、呼び出された、なんて事―――。
(H22,12,01)