9 初めまして、じゃない?
螺旋階段を上り、扉を開ける。
するとそこに広がるのは、あの映画で見たままの風景だった。
「おお、よく来たのぉ〜セブルス。時間通りじゃな」
「はい、校長……」
白い髭をわんさかとたくわえ、微笑んでいる老人―――あれは、アルバス・ダンブルドア!映画そっくりの風貌だった。
ダンブルドア校長はフォッフォッと笑うと、杖を一振り。するとティーセットが現れた。
「まずはお茶でも飲みながら話すとしようぞ」
腰を落ち着けた私達。まずは出された紅茶を飲んだ。
やっぱり美味しい……。ここが英国だから?それとも校長先生の魔法が凄いってことなんだろうか…?
カップを見つめながらそんなことをぼんやりと考えていたら、キラキラと光る好奇心いっぱいの二つの目が、私をじいっと見つめていた。
…………えーと……ど、どうしよう……。
固まっていたら、校長先生が一言。
「セブルスとの感動の対面はどうじゃった?熱〜いキッスは胸キュンじゃろうな!はぁ〜うらやましい……」
え。
目がテンとは、まさにこのこと。
校長先生の衝撃的な台詞に私が固まっていたら、教授がピシャリと言い返した。
「校長、パワハラは止めていただきたい!」
「ほっほっほっ……セブルス、これくらい良いじゃろう?ワシだとて、シズノと再会できた喜びにちとテンションが上がっておるのじゃ」
「上がりすぎです!」
「ほっほっほ…」
典型的パワハラを見た。
校長先生と教授がやり合っているのを横目で見ながら、私は違和感を感じていた。だって、だって校長先生だって私のこと、“再会できた”って言ったよね?
私は初めてなのに。
いや、勿論当然ながら映画では何度も見ているけれど。そういうこととは違うだろうし。
確認したい。きちんと。
私の胸はドキドキしだした。
校長先生なら、答えてくれる―――?
私は呼吸を整えると、校長先生に言った。
「ダンブルドア校長先生、私―――」
すると校長先生は微笑んでこう言ってきた。
「前みたいに”アルバスじいちゃん”、と呼んではくれんかの?」
「前みたいに――?」
「やれやれ、どうやらこれは、違うのかの……」
「どうやら、そのようです。しかし、我輩の気持ちは変わりません」
「そうか、セブルス……君はそれほどまでに……」
「はい、シズノを誰よりも、何よりも…。たとえ……我輩のことを憶えていなくても、初めて逢ったと捉えていたとしても我輩は……」
「そうか。それならばワシとしてはこう言うだけじゃ」
二人の世界になってしまって話に入っていけない私。戸惑っているのが十分伝わってると思うんですけど。
頭の中、ハテナだらけだよぉ〜。
困った顔をしている私に、校長先生は一言。
「シズノ、おかえり……」
優しい、本当に優しい笑顔で―――。
(H22,11,26)