あなたに逢いたくて | ナノ


 6 還ってきた娘



シズノ…我輩の愛しい人。


この日を、どんなに待ち焦がれた事か。
我輩は待っていた。そう、ずっと待っていたのだ。



お前だけを――――。





学期前の休みに入っているここ、ホグワーツ魔法魔術学校。
生徒が当然いないこの時期は、我輩達教師の、つかの間の休日と言ってもよいであろう。
自分が進めている研究に没頭するもよし、論文書きに時間を費やすのもよし、新しい薬の調合を、試してみるのもよし。
読みかけの、例の本を読み進めるのも良いかもしれん。

我輩はそう、思っていたのだが、ダンブルドアからの手紙が、その予定を狂わせた。





あの子がやって来るという。
我輩が長年、待ち焦がれたあの愛しい子が。

ある日突然、我輩達の前から居なくなり、行方不明になっていたあの、シズノが還ってくる。
我輩の胸は躍った。

ああ、誰よりも早く、お前に逢いたい。
あの微笑みが見たい。我輩の名前を、呼んでほしいのだ。

「セブ……待たせてごめんね……」

と言ってほしい。






校長によれば、現われる場所の特定まではできないらしい。ここ、ホグワーツであることは確実なようだ。
それから、我輩は暇さえあれば、ホグワーツを彷徨った。

いきなりこちらに還ってくるのだから、さぞかし心細いであろうと思ってな。


……正直に言うと、我輩は少しでも早く、シズノに逢いたいのだ。





早く…早く逢いたい。
長年溜まったこの想いを、受け取ってほしいのだ、シズノ……。





ゴーストからの情報で、廊下で学生が倒れているようだと聞いた我輩は、猛ダッシュで現場へと走った。
そこで我輩が目にしたものとは――――、





ホグワーツの制服を着た、シズノだった。
あの日、あの時のままの。
ネクタイまで、同じスリザリン。
髪を乱し、瞳を閉じているが、これは間違うことなく…シズノだ。




不覚にも、我輩は泣きそうになってしまった。初めて神に感謝した。
そおっと、壊れ物を扱うようにシズノを抱き上げる。
こんなにシズノは華奢で、軽かったか…?それとも、我輩が成長しただけか……。
ぐったりとして意識のないシズノ。しかし、ゆっくりとだが呼吸をしているのがわかる。
胸に耳を当てると、心臓の音がトクトクと聞こえる。



生きているのだ、違いなく。我輩の胸は感激に震えた。

我輩はシズノの額にそっとキスをした。そうして囁く。



「おかえり……シズノ……」


(H22, 11,22)



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