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結婚式ごっこ。T



俺の名前は緑間真太郎。あと1ヶ月で小学5年生になる。
バスケが得意で料理が苦手。コミニュケーションをとるのも苦手。
彼女の名前は高尾和奈。あと1ヶ月でこの街を引っ越す。
俺の幼馴染、同い年でバスケが好き。あとやたら友人が多い。

幼馴染が引っ越すなどというシチュエーションはどこにでもあるものだろう。
今まで家も隣、幼稚園も一緒、バスケでも学校でも常に相棒だった(俺は下僕だと思っていたが)幼馴染が急に引っ越す、ドラマティックだとは思う。

問題は俺が、その高尾のことをずっと好きだったということだ。


引っ越すと聞いたとき、もっと人事を尽くしていればと何度も思った。
別に一生会えないわけではないのにこの『小学生』という微妙な年齢が邪魔をする。
もっと小さければ忘れることもできるだろうし、もっと大きければ自力で会いに行ける。
しかしどこへ行くのか聞けば県どころか地方すら違った。飛行機の使用推奨だった。

高尾はおそらく俺のことを好いていると思う。
真ちゃん真ちゃんと俺の行く先々全てついてくる。周りからからかわれても否定をしない。それどころか少し赤くなる。
桃井にそれとなく聞いてくれと頼んだら、脈ありそうと報告されたくらいだ。
これで自惚れだったらバスケやめてやるのだよ。

「真ちゃんおはよー!」
「おはよう・・・なのだよ」

高尾に告白する。

今まで10年間隣にいて1度もできなかった告白を、残り1ヶ月でなんとしてもしたい。
できればサプライズ好きな高尾のために何か凝った背景でしたい。
しかし高尾のコミュ力ととんでもなく良い目がやっかいだ。友人や家族に協力を促したって速攻バレるだろう。
・・・だからといって1人で何かできるほど俺は器用でない。

「あ、そういえば今日日直じゃん!真ちゃん走らなきゃ!」
「まっ待つのだよ!!」

目の前の赤いランドセルが、揺れる。



「・・・ということなのだよ」
「それで僕に相談したわけか」

誰かに言わなければと、選んだのは比較的仲の良い赤司征十郎だった。

のだが。

「せっかく仲良くなったのにー和奈ちゃーん!」
「和奈っちいなくなるとか寂しすぎっス!!」
「和ちんが作るおかし美味しかったなぁ」
「カズナはもう少し大きくなったらこう、おっぱ「大輝くん最低です」

「・・・お前らは呼んでないのだよ」
「僕が呼んだんだよ、真太郎。これだけいれば何かヒントが出てくるかもしれないだろう?」

厄介事にならないためにあえて赤司だけを呼んだ意味が・・・なかった。
やっともらった自分の部屋にカラフルな頭がならんでチカチカする。

「真太郎くん」

突然横から声がした。黒子テツヤだ。こいつは何を考えているのかわからないから、あまり好いていない。

「もういっそのことプロポーズとかどうでしょう」
「は?」
「あ、テツいいなそれ。まどろっこしくなくていいじゃん」
「いいんじゃねー、ん、これうまぁー」
「そうだ!ドレスプレゼントするとか喜ぶと思うよ!」
「さつきっち天才っス!」
「お金ないですよ。小学生ですし」
「作っちゃえばいいのよ!ね、真太郎くん!」


 ほ ら な。


テツヤのせいでこのざまだ。
助けを求めて赤司を見るが、どうやら無理そうだ。とてもいい顔でハサミを鳴らしている。

「期限は一ヶ月と12日、それまでになんとしてもドレスを作らなくてはならない。真太郎のためにみんなで頑張ろうか。・・・僕の言うことは?」シャキシャキ
「「「「「「ぜったーい!!!」」」」」」


こうして俺たちの、地獄のドレス作りが始まった。


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