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世界で一番幸せな男と、不幸な男が存在する日



ああ、何故俺はここにいる。

何故お前の隣にいない。
何故お前は隣にいない。

いや、隣にはいる。
多分これから先もずっとあいつの隣にはいられるのだろう。
でもそれはあくまで「隣にいられる」のであって、それ以上のことでもそれ以下のことでもない。
俺とあいつが永遠のライバルである事実はこの先ずっと覆ることはない。



ああ、何故俺はこんなものを。

何故お前に泣けない。
何故お前と泣けない。

いや、泣くことはいつだってある。
多分これから先もずっとあいつの泣き顔は見られるのだろう。
でもそれはあくまで「泣き顔を見られる」のであって、それ以上のことでもそれ以下のことでもない。
俺とあいつが一生仲良しこよしだという事実はこの先ずっと覆ることはない。



ああ、何故俺はこんなことを。

何故お前と笑い合えない。
何故お前と笑い合えない。

いや、笑うことなんて常にする。
たぶんこれから先もずっとあいつの笑い声は聞いていられるのだろう。
でもそれはあくまで「笑い声を聞くことができる」のであって、それ以下のことでもそれ以下のことでもない。
俺とあいつは・・・。あいつは・・・。俺は・・・。



慣れないパソコンに向かっているのは何故。
文字を打とうと必死に過去を思い出しているのは何故。
俺の知らない女の、隣にいて一緒に泣いて笑いあってるあいつを想像して吐きそうになったのは誰。

俺。


断ってしまえばよかったんだ。
こんな役目、あいつが幸せになるのを見るには一番しんどい役なのに、俺は断らなかった。断れなかった。
バカみたいに口開けて、おめでと、とか言って、用事がある、とか嘘ついて、もう覚えてない。俺の脳みそはあんまし働かない。


思いっきりパソコンと閉じる。内容は明日その時考える。もう、そんでいい。考えたくない。いざとなれば黄瀬あたりに押し付ければいい。
歯磨きもそこそこに俺は寝た。風呂も飯も洗い物も洗濯も全部後回しだ。
泣くのも、全部全部後回しだ。


世界で一番幸せな男と、不幸な男が存在する日
(あと十時間二十四分十一秒)



「青峰、俺、結婚するんだ」
「・・・そ。おめでと」
「反応うっす!もっと喜んでくれると思ったんだけど」
「祝ってんだろ。じゃあ俺呼ばれてるから」
「おう!じゃあ、またな。青峰」
「ん」


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