life=marathon
俺はお前に追いつきたかった。
いろんな意味で俺の前を走るお前に、追いつきたくて必死だった。
お前は勇者だ。そして王子だ。
皆から好かれ、頼もしく、強くあり、それであって温かみを感じさせるすごい奴だ。
それに比べて俺は、名も無き旅の剣士。言ってしまえばただの人間だ。
強さにも限度があった。
それはまるでグラスから溢れるワインのようにさらさらと流れていく。
お前の強さは底なしだ。
俺はもう自分の限界がちらついた。
それから俺は、走るのをやめたんだ。
毎日毎日歯食いしばって必死に動かしていた足が、突然動かなくなって。
これが勇者と人間の差かと声に出さず泣いた。
お前の背中が小さくなっていくのを、ただ見ることしかできない自分が悔しくて泣いた。
追いつきたかった背中はもう見えない。
だから俺は待つ。
いつかこの世で一番強くなったお前と戦う日を、ゴールで待つ。
そのときはまた、お手合せ願おうか。
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