Novel

 思い出ヒーロー

そのとき俺は居眠りをしてしまった。
部活でどうにかなっていたのだ。部室の机に肘をついた。
うとうとと頭は完全にとんでいて、首がガクッとなったとき、俺は意識を手放したのだ。
・・・多分そのはず。


「ここはどこだよ・・・」

目が覚めたら知らない場所につったっていました・・・。
っ冗談じゃねぇよ。
なんだ?俺は誰かに誘拐されたのか?心当たりがありすぎるが、学校の中だし。
寝ぼけて迷子になったか?それだったら誰かが止めるだろう。

「いーちっ、にーぃ、さぁーん」

謎の林?の中でぼーっと考えていたら、子供の声がした。

「しーぃ、ごー、ろーく・・・あっ」

コロコロと転がってきたサッカーボールとそれを追いかけるガキ・・・あれ?

「ぼぉる取ってくださぁい」
「お前の?」
「おぅ」

手にとったボールにはきれいな字で『あつし』と書いてあった。
まさか・・・。

「名前は?」
「俺?みなみさわ、あつし」
「っ!?じゃ、じゃあここどこかわかるか?」
「がっさんくにみつだけど、おまえ迷子?」
「や、迷子・・・ではねーなうん」

この子供は間違いなく南沢さんだ。
赤紫の髪も変わった目も斜め上からの態度もぜーんぶ南沢さん。

「おまえなまえは?」
「倉間」
「おれさ、ひっこしすんの。らいもんに」
「へー、いつ?」
「きょう」
「は?」
「なかまとわかれんのやだからにげた」

南沢さんは小さい頃月山国光にいたのかと、今更ながら気づいた。
ということはお友達とはあのゴリラや目つき悪いのやモヒカンチビかもしれない。
そして自分がタイムスリップしていることにも気づいた。
本来なら自分はここにいないのだ。

「家帰らないと」
「やだね、だれがかえるかよ」

こんのクソガキと思ったがあくまで手は出さない。
未来の南沢さんに危害が加わる。

「らいもんってとかいじゃん?おまえみたいなめつきわるいのいそうだしさ」

さすが南沢さん、物事を深く考えるお方だ。
・・・と考え拳を抑える。
危ない危ないグーで殴るところだった。

「あのな、確かに雷門は変わったやつ多いけど、アンタみたいにサッカーが好きな奴うじゃうじゃいるし、すぐダチも出来る。みんないいやつだからな」
「・・・わかったよ」


家までは見送らなかった。
何となくついて行ってはいけない気がした。
林の中に戻る途中、けっつまづいて派手にこけた。意識がどんどん遠くなって、



「起きたかー」
「んみっ南沢さん!!??」

俺は元の部室にいた。

「鍵当番、俺なんですけど」
「サーセンした」
「倉間って兄貴とかいないよな?」
「俺、一人っ子なんで」
「だよな。変なの」


俺が体験したあの一瞬の出来事は、確かに南沢さんの中にあった。
それは誰にも言っていない。もちろん南沢さんにも。
南沢さんの思い出の中には今日、俺が登場した。








back

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -