Novel

 闇色スケッチブック

今月の僕のスケッチブックは、真っ黒だ。
少し黒い紙で描きたいと思って買ってみた。
白い線で描くのも結構新鮮で気分上々!
ただ背景はあんまり描けないから、もっぱらサッカーボールを眺めている。

「・・・で、こんなに描いちゃった」
「サッカーボールでうまるとかさ・・・どっかの天馬くんじゃないんだし」
「えへへー」

帰り道。
秋になったから下校時間こそ早くなったけどやっぱり少し薄暗い。
ユニフォームだけじゃ結構寒いから、上に学ランを羽織った。
すごい変な格好だけど気にしない。
それによく見れば同じような格好の人だっている。

「昨日のジャンプ読んだ?」
「読んだよー最近新作がきてるよね」
「だろ?よかった、輝くんがハマってくれて。天馬くんは『俺はコロコロ派だもんね!』って聞いてくれないんだよな」
「コロコロも好きだよ」
「いーや断然ジャンプだ!あ、暗殺教室よくね?」
「うん、くねくね可愛い」
「ぶっちゃけ触ってみたい」
「なにそれー」

この何気ない話は少し行った駅までの短い時間しかできない。
僕の家は隣町だから電車だけど、マサキくんは駅の向こうから歩きだ。

「最近薄暗いから気をつけろよ、電車の中とか・・・あと駅の周りとかな」
「うん、いつもありがとうね」
「じゃあ明日な」
「ばいばーい!」


隣町の駅から僕の家までは10分ほど歩かなきゃいけない。
黒いスケッチブックががさがさ動く。
もう空も真っ暗で、人の気配どころか生き物の気配すらしなくて、すごく怖い。
視界は全部闇色だ。

「マサキくんがいたらなぁ」

きっと笑わせてくれる。
きっと楽しませてくれる。
マサキくんと出会ってもう半年も経った。
お互いはじめましてだったのに、今はこうやっていないことが寂しいぐらい仲良しになった。
僕にとって必要不可欠な存在、心の底からの友達。
考えてちょっとだけ恥ずかしくなった。なんか依存してるみたいで。
ちょっとだけ邪魔だったスケッチブックを空に掲げた。

マサキくんとの”これから”がたくさん作れますように。

僕はスケッチブックと同じ闇色の空に願った。
そしてにっこり笑って、駆け出した。





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