Novel

 piggyback ride

アルファが怪我をした。2人で練習している時だ。
酷い捻挫で赤く腫れていた、骨も折れているかもしれない。
それでもアルファはマスターにいうのを嫌がった。
私たちにはもう後がないのだから無理もない・・・だが少々無理をしすぎたと思う。

「おはようございます、アルファ」
「おはよう」

あれから一週間、腫れは中々ひかない。
素人なりに手当してもなんともならない。むしろ悪化している気さえする。
右足に丁寧に包帯をまいていく。

「中々治りませんね」
「いつかは治る」
「・・・そうですね」

アルファの肩に手をかけて支える。空いている右手で松葉杖を持ち、そのまま腰を浮かせる。

「行きましょうか」

私たちに休みなどない。怪我人でも練習には参加する。
怪我を隠しているアルファには尚更だ。マスターがあまり練習を見に来ないことが今は助かっている。


苦労してロッカールームについた。
皆より1時間は早く練習に来るようにした。準備は何かと時間がかかるのだ。

「え・・・ぃ・・・・・・」
「お呼でしょうか・・・アルファ!」

座っていたはずなのに立っていたが今はとてもじゃないが立てる状態ではない。
壁に全身をもたれさせるようにぐったりとしていた。
顔は赤く、目もうつろ。あぁ風邪か何かで熱を出したのだ。
もしかしたら患部から菌が入ったのかもしれない。そうだったら大事だ。
すぐに人を呼ぼうと思い立ち上がりタオルをかぶせる。

「え…なむ…」

服を引っ張られた。

「大丈夫ですか、今人を呼んできますから」

無言で首をふられる。
顔色は悪いし、体調が悪いのは見て明らかだ。

「でも私では手当できませんし」

また首をを横にふられる。
困った。首筋に手を当ててみる。やっぱり熱い。

「…背負っていきましょうか」

真っ黒な瞳が大きく開く。
そしてゆっくり伏せると

「…頼む」

酷く弱々しい声だった。


自分と同じくらいの体格の男を、背負うのは正直辛かった。
でもアルファは背の割りに無駄がなく軽い。

「しんどくないですか?」
「…あぁ」
「もう少しですから」

ちろちろと紫の髪が耳元に当たってくすぐったい。
アルファの吐息が熱くて火傷しそうだ。

「・・・情けないな」
「え?」
「エイナムは・・・私のためにここまでしてくれているのに、何もできない自分が悔しい」

普段あまり話さないアルファが、自分のために話してくれた。
それだけでもう胸がいっぱいだ。

「私は一生アルファのお傍にいます、これくらいなんでもないです」
「・・・ありがとう」


結局ただの風邪だった。
怪我を隠していたことはレイザにこっぴどく叱られ(アルファは軽く)、プロ並みの手つきであっというまに手当された。
マスターに隠すことについては了承してくれ、これから何も隠し事をしないことを約束した。

そんな中、私は首元がちりちりとほんのり痛いまましばらく治らなかった。





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