Novel

 若葉色スケッチブック

カーテンからのまぶしい光で目がパチッと覚めた。
開けてあげると太陽さんが待ってました!とばかりに輝いてて。
ついでだから窓も開けると、隣の家や近所から朝ごはんのいい匂いがして…あぁ、とってもいい天気!


部屋を出て、1人分の朝ごはんを作って、いつもみたいに血液型占いを見る。
「よし、絶好調!」
1番だった。

流しで洗い物してると、空のお弁当箱が目に入った。
この間の遠足で使った僕の青いお弁当箱。
お母さんのたまごやきは甘いけど、マサキくんのたまごやきはお醤油なんだっけ…

プルルルルル
思い立ったらすぐに行動するタイプだった。
日曜日の朝だからマサキくんは絶対起きてる。
『もしもし?』
ほら、ね。
「もしもしマサキくん、おはよう!朝早くごめんね?」
『輝くんからの電話めちゃくちゃうれしいから全然オッケー』
「えへへ嬉しいなー!あ、あのね…」



「マサキくんおはよー!!」
「はよー」
右手にはスケッチブック、左手は2人分のお弁当。
たまごやきはもちろん砂糖とお醤油の2種類!
せっかくお天気だから2人でお弁当食べようって誘った。
スケッチブックは、マサキくんが最近絵を描き始めたっていうから、持ってきた。

「今度は黄緑色なの?」
「あ、うん5月は緑がきれいでしょ?」
「なるほど」

5月は黄緑色。
ちっちゃいころからそう思っている。
若葉がきれいだし、桜が散っちゃった後の葉っぱとか桜に負けないくらい青々としててすごく好きだった。

「まずは…お絵かき?」

広い公園のベンチで2人並んで絵を描いた。
僕は自然が好きだから南の花畑側を、マサキくんは子供が好きだからって東の遊具側をそれぞれ描いた。
描いてる間はお互い無言で、いつも何かと喋ってるマサキくんの真剣な横顔はなんだか不思議な感じだった。

「えっと…これは、なんだろう」
「何ってあのガキだろ、黒い服のさ」
「と…とっても個性的な絵だね」
「ちぇーっどーせ俺は絵心ないですぅー」

一言でいえば、宇宙人。
二言なら、宇宙人襲来。
かろうじて地面と空の違いは分かるけど、遊具はアメーバ、子供はなんか、溶けてる。
今は鉛筆で下書きの状態だけどこれに色を付けたらどうなるんだろう。特に子供。

「飯にしようぜー色塗りはあとあと」

ガン見してたからか、話題を変えたマサキくん。
まだ10時なんだけど…早めのお弁当にすることになった。


「おっうまそー」
「いっぱい作ったからいっぱい食べてね!」

有りあわせで申し訳なかったけど、美味しそうに食べてくれるからすっごく嬉しかった。
昨日の残り物とか、この前のお弁当のあまりとか、とにかく色々詰め込んだだけなんだけど、ま、いいよね!
誘ったの僕だけど!

「たまごやき、俺、甘い方が好きなんだよね」
「そうなの!?僕てっきりいつもお醤油味だから…」
「ヒロトさんとかは醤油派なんだって」
「あーなるほど…」

「あ、ごちそーさん!!先に色塗りやってくるわ、輝くんはごゆっくりどーぞ」
「えっあっ、が、頑張れ―」



夕暮れになった。
空は真っ赤になっちゃって、あんなにいた子供も今はそんなに居ない。
夕方は寂しいから苦手。バイバーイって、また明日ねって言うのがとてつもなく寂しいから。
1人に戻るのが嫌だから。

「なんか久しぶりに絵の具広げた!」
「絵の具セットも買いなよーまさかあんなにカピカピだとは…」
「わりぃわりぃ今度買うから」

色を塗っても宇宙人は宇宙人だった。
でもまぁそれがマサキくんの個性かなぁと思うことにする。
(…聞いたら美術はオール1とか言うし!)
空の色はすっごく綺麗で、普段から空をよく見てるのかなー。
そういえばマサキくんの髪も空色だなー…

「じゃ、俺はここでまた明日な!」

やっぱ寂しいな。夕暮れのまた明日、は。

「うん」
「なんてなー」

…へ?

「今日お前んち泊まるわ、どーせ1人は寂しいとか言うんだろ?」
「〜!!なんでわかるの!!!」
「普段から輝くんの事よく見てるからに決まってんじゃん」

「…そんな恥ずかしい事いうと泊めてあげないよ」
「はァ!?そんなのアリかよー!!??」



僕ともう1つの影法師はすごくすごく長くなって、だんだん消えて行ってしまった。
夜色に、黄緑はよく映える。





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