Novel

  06

がやがや

そんな効果音が聞こえそうなぐらい、静かな病室が一気に騒がしくなった。
「神童!」
「キャプテン!大丈夫ですか?」
霧野が俺を呼び、天馬が心配そうに顔を覗き込む。
入って来たのはサッカー部の皆で、あっという間に部屋はいっぱいになった。
「部活皆でサボったんだ。少しうるさくなるけど、悪く思うなよ。」
そう言った霧野は苦笑い。なるほど、天馬と信助が早速何かをいじり始めた。
「かまわない。来てくれてありがとう。」
「皆が提案したんだ。お礼は皆に言ってくれ。」
楽しい時間だ。自分がピアノを弾けなくなった事を信じられないくらい、平和なのだ。
すると霧野が突然、重そうに口を開いた。
「……その、聞いたんだけど…指動かないって……本当なのか?」
賑やかな病室とは反対に、俺たちの周りは重苦しい雰囲気につつまれた。
「……リハビリしだいで日常生活に支障はなくなるって…」
「っじゃあ!」
「……」俺は無言で首を振った。
長い間一緒にいたからか、霧野はすぐに察し、軽くうつむいた。
「そう、か……その…ごめん」

霧野達はその後すぐに帰った。
それでも今、自分のおかれた状況を理解したくなかった。
「俺の、夢」
叶う事はなくなった、俺の夢。
南沢さんのお姉さんもこんな気持ちだったのだろうか。
…ほんの少し、死んでもいいだなんて考えてしまった自分が嫌になった。

ガラッ

突然扉が開いた。
面会時間はかなりのぎりぎり、誰だろうと体を起こす。
「み、みな…南沢さん…」
そこに立っていたのはあの、南沢さんだった。
うつむいて扉のすぐ前で立っている、ただそれだけだ。しいて言えば、泣きそうな顔だ。
「ごめんな」
やけに久しぶりに感じる、南沢さんの声。
「また姉さんみたいに…神童までっ…ピアノ、弾け…なくなったぁ…っごめん…、俺のせいでっ…」
あの南沢さんが、ボロボロと泣いている。正直、びっくりだ。
「なんでっ…俺じゃないんだよ…っ…」
肩を震わせて、目尻に涙をいっぱい溜めて、瞬きする度に大粒の雫がこぼれる。
貴方のせいではないんです。これは、貴方のせいではないんですよ。
「あの、南沢さん…






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