Novel

  05

どす黒い空を、どことなく不吉に感じながら俺は早足で音楽室を出た。
飛び出した先には、何故か複数の女子先輩がいた。
俺のことをにらみながらヒソヒソと話している…女子特有の行動だ。
そういう人には関わりたくなかったし、一刻も早くここを逃げ出したかったから、俺は階段をかけ下りようとした。
すると突然視界が歪み、本来見えるはずのない白い天井が目に入った。
次の瞬間鋭い痛みが全身に入り、思わずうめき声をあげる。
意識が遠のくなか、甲高い声で
「嘘…まじで落ちちゃった」
「いいのよ!南沢くんの苦しみに比べたらこれくらい!」
「どうやっていいわけするぅー?」
「事故よ事故。大丈夫バレやしないわ」キャハハハハ

落とされた。
俺はあの先輩たちに突き落とされたのだ。
そして俺は意識をなくした。


目が覚めたら病院だった。
白い天井、白いカーテン、白いベッド…言わずもがな病室である。
首を少し動かす。寝違えたような痛みだ。たいしたことはない……はず。
次は足。少々重いが、まぁなんとか動かせる。
最後は手。右腕をあげる。うん大丈夫。指を曲げる。これもなんとか平気。
左腕。重い、思うように動かない。次、指、っ…あれ……おかしいな?


俺は一気に青ざめた。



左指が、、、動かない



しばらく呆然としていると、突然医者がやってきて
「腕も指もリハビリしだいで日常生活には支障は出なくなるでしょう。ただ……プロのピアニストは、もう」
諦めてください。

俺は自分でも分かるぐらいさらに真っ青になった。
プロのピアニストは諦めろ、ピアニスト、ピアノ、俺の…夢?
すべてが儚くもろく、いとも簡単に崩れた。夢が消えた、その瞬間なのだ。



何もする事ができず、何もする事が無く、ただただ未来がみえない頭で考えていた、このシチュエーション。

そう、南沢さんのお姉さんだ。

そう考えだしてから、無性に南沢さんに会いたくなった。
大体、あれからどれくらいの時間が経っているのかまるでわからない。
今は…昼か、夕方か…
などと色々考えていると、ガラッと扉が開き、わらわらと大人数が入ってきた。










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