Novel

 好きなんだよ、本当はね

「シュウ」
「…なぁんだ、白竜」

黒髪の少年、シュウは器用に木に登り空を見ていた。

「満月だ」

そうつぶやいた白髪の少年の名は白竜。
透き通るような白い肌が、月に照らされて目立つ。

「もう明日だな」
シュウは口を開かない。
「どうした」

「…満月は嫌いなんだ」
月を見上げながら淋しげに顔を歪ませるシュウ。
特徴的な髪型が、夜風にゆれる。

「何故だ」
「帰らなくちゃならないんだ。本当の、居るべき世界へ。」
木から飛び降りつつ、言い切った。

「それはそうと、どうしてここに?ここはボクたちの森だけど。」

「…これを渡しにきたんだ。」
多少戸惑いながらもシュウの手のひらに握らせたのは、
「ボクのじゃないよ」
「俺のだ。お前にやる」
サッカーがモチーフの金属製ブレスレット。

「ゴッドエデンに来る前からの、俺の御守りなんだ」
「大事なものなんでしょ?」
と遠慮するシュウに白竜は小さく言った。

「大事なものだからこそ大事なシュウにあげたい」

赤面する頬にそっと手を添えると、異常に冷たかった。
「ボクが島から出ないこと知ってたんだね」
大きな目を伏せる。
「冷たいでしょ、ボク。死んでる人みたいにさ」
その言葉に嫌な予感がした白竜は、思わず目の前のシュウを抱きしめた。
やはり冷たく、やけに軽い。

「…っ」
離したくない。
今この手を離したら、シュウが自分から離れていくのではないかと白竜は顔を歪ませた。

「ごめんね白竜。ずっと一緒に居られなくて」
「いやお前はずっとここに居る。離れてなんかいかない」

「でも…今夜、妹のところへ帰らなくちゃ」
そこで白竜は全てを悟った。

「また大切な人を失うのか、俺は…」
立場はどうであれ、同じ時間を共に過ごした大切な人。
剣城というライバルを少し前に失った白竜は、人が去るのを恐れるようになった。
「シュウ…」

ふわり

「白竜」
柔らかいあの声で、柔らかく抱きしめた。
「好きだよ」

「っ俺…も、」
好き。大好き。






あれから何年も経った。
既に廃墟、忘れられた孤島「ゴッドエデン」に、今でも白髪の青年がやって来るという。


……信じるか信じないかはあなた次第だが。





「シュウ、俺も向こうへいきたいな」



「」





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