Novel

 世界で一番の幸せ者

目の前で顔真っ赤にして息切らして泣きべそかいてるやつの名前は、影山輝。
ただいま現在進行系で絶賛片思い中。もちろん、俺が。

「…で。両親今日は帰ってこないから何。」
俺には家がない。施設から通ってるから、家というより部屋だ。
「あ、え…かっ鍵、持ってくるの忘れて……家入れないんです…」
こいつじゃなかったら腹抱えて笑ってる。だってダセェし。
「めっ迷惑ですよね、勝手にごめんなさい…」
「…てかそもそもここ施設だから姉さんに聞いてみないと、」
瞳子さんなら快く受け入れてくれるだろうけど。
「いいんですか…」
「んーいいんじゃね?基本いつもフリーダムだし?あと敬語やめろ。」
「ありがとう…狩屋くん。」
とりあえず、寒いし入れよって影山を招き入れる。


「わーマサキが友達連れてきた〜」
「めずらし!」
「よかったねマサキ!おめでとぅーす」
「兄ちゃんなんて名前?」
「かっわいい兄ちゃんだなーマサキとは大違い」
「お前らうるせえ!!!!」

小学生のチビをいつも通り叱ってると、影山は不思議そうにキョロキョロしてた。
そういえば1人っ子って言ってたしチビになれてないのか。

「こっこんにちは!影山輝です!」
「輝兄ちゃんってこないだマサキが俺に話してくれたひとだぁ〜」
「え!なになに!?」
「んっとお話は何言ってるかわかんなかったけど、すっごい嬉しそうだった」

お・ま・え・ら後でフルボッコしてやる。

「狩屋くん、えっと僕どこに…」
「あ、先俺の部屋行っといて。影山を部屋まで案内する係はじゃんけんで勝った奴上位3人な!最初はグー」
じゃんけーんぽんっ!!!



「うーいここだよ!」
「うんありがとね」
「ったく、マサキも輝兄ちゃんのこと見習えばいいのに」
「そーそー!輝兄ちゃん明日も遊べる?」
「うん多分」
「多分かぁー…ま、いっか」
「あのねー俺ねーマサキの秘密知ってるよ」
「何それー」ニコッ
「あのね、マサキは輝兄ちゃんのこと『好き』なんだって!!!」
「へ?」



「あー後でしばく」
チビたちを風呂に入れるのは俺の仕事だ。
その数約30人、かかる時間は1時間。毎日がガチバトル。

「おれはせーぎのひーろーだ!さぁこい、わるものめ!!」
「ぐわぁっ」ごきゅっ

状況説明→クソガキの1人が俺の背中にドロップキック

「ぼくのぱんつないー」
「わーまてまてー」つるっ「うわぁ」ごんっ
「タオルまーだーでーすーかー」
「マサキにシャワーこうげきだ!!」ビシャー

「…お前…ら………一回黙れ!風呂くらいおとなしく入れ!」




「おじゃましてます、おかえり狩屋くん」
「おう…」

部屋に帰ったら影山が課題をやってた。正座で。

「勝手に机借りてるけどよかったかな?」
首をちょこっとかしげる、何気ないしぐさがかわいすぎる。
「全然いいよ。どうせ使わないし」
勉強しないし…は怒られそうだから言わない。

それにしてもこいつ字綺麗だなーとか思ってみる。
同じクラスじゃないから、部活以外の影山を俺は知らない。それが悔しい。
天馬や信助は同じ条件だけど、剣城は一歩リードだ。
同じクラス、違うクラスってだけでのハンデが大きすぎる…うん。
影山本人は気づいてないけど、あいつ何気に先輩受けがいいから、いつ取られるかわからない。
うーん…厳しぃなー…。

「なーなー影y「あっあのっ狩屋くんって、ぼぼぼ僕の事っす、好きなんですか!!!」

へ?

あまりの突然の出来事に口をぱくぱくさせてたら、目を泳がせて真っ赤になりながらあの、とか、えっと、とかばっか言ってる。
めっちゃかわいい。

「好きって言ったらどうするの」

顔を思いっきり近づけて言ったら、近いですよぉって涙目で反撃してきた。
我ながら俺ってわっるい奴。Sっ気あるのかもーと心の中で苦笑い。
「…好きじゃない男の子のおうちなんて、いっ行きません!」
「へーそれは遠まわしに俺のことが好きって言ってるのといっしょだよね?」
「…はい」

俺は少しあいたドアの向こうに、軽くウインクをした。
そのあとすぐ、おでこにキスをした。
「俺、今世界で一番幸せだわ」
「僕もです!」







「えへへー輝兄ちゃん喜んでくれたかなぁ」
「うわマサキこっち見た!気づいてるらしい」
「でこチューしたぜ!」
「ラブラブじゃん」
「このことは瞳子さんにもヒロト兄ちゃんにも内緒な!」
「「「りょーかーい!!!」」」






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