Novel

 ムカつく。

俺が入学した時、サッカー部は希望者50人強の大人気クラブだった。
ここらで1番大きくサッカー部は強豪だったから、俺は両親に無理をいって私立の雷門に入学した。
テストには合格したものの、それからはずっと基礎練基礎練。おまけに厳しいからやめていく同級生がどんどん増えて…
しかもその頃はフィフスセクターが動き始めた頃。
俺が1年で始めてスタメン出場した試合は、最初から負けと決まっていた試合だった。
その日から俺はサッカーに対する考えを改めた。



「どう思う、今のサッカー。」
「別に。何も。」
「そうか、俺は」
部活が終わった後の薄暗い河川敷で小さなサッカー少年が元気に走り回っていた。
「少しだけ、悔しいかな。」
隣には幼馴染の三国。2人で自転車を止め、河川敷を見下ろしている。
どっちかが見ようと言ったわけでもなく、ただそれが義務の様に自然とそうしていた。
「南沢、俺はもう帰るが…」
「あぁじゃまた明日。」
「そういえば」
そこの白いユニフォーム着てる10番の片目、南沢に似てる感じがする、と付け加えてあいつは去って行った。
まじ意味わかんねぇ。
片目、片目……あいつか。バカ言え、どこが似てるんだよあんなチビ。
「すみません!ボールとってくださぁい!」
気づいたら目の前にボールがあった。
下で手をふっている例のチビがなんだかムカついたから、思いっきりシュートしてやった。
いわゆる、八つ当たり…俺って最低。
「い、今のって…ソニックショットですよね!わぁ雷門の南沢さんでスか!?本物だー!!!!!」
何こいつ、俺の事知ってるわけ?
「こないだの試合観たんスよ!すっげぇかっこよかった!!南沢さんみたいになれるよう頑張りますんで!」
初対面のはずが、いきなり目標宣言されちまった。あーぁめんどくせ。
「南沢さん!俺、雷門入って、南沢さんの隣でシュートバンバン決めますから。」
と突然叫ばれたから、なまいきって軽くデコピンをおみまいしてやった。なんか、ムカついたし。



あいつが入学した時、俺たち2年は4人しか残らなかった。
先輩が引退してから1年でファーストに上がる奴が多くなった。
MFDFは競争率が高かったけど、FWはそれほどでもなく(むしろ俺しかいなく)てのびのびとしていた。

そこにだ。
そこに例の片目がやってきたのだ。
「お久しぶりです、南沢さん。倉間です。」
「ん。」
挑戦的な目とか日焼けた肌とか無造作に伸ばした髪とか相変わらずな背とか、なんかもう色々ムカつく。

でも、

「俺、絶対南沢さんの10番奪って見せますから。」
あぁやっぱり「やってみろよ。」ムカつく。






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