Novel

 さっかーびよりさいかいびより

『あっちゃん!きょーはあそべるの?』
『あそべるよ。どこであそぶ?』
『んとね、ぼくのおうちでさっかーしよっ!』
『いいよーたっくんのおうち、ひろくていいなぁ』

不意に思い出した、幼稚園のころの幼い会話。
たっくん、というのは俺の事で、あっちゃんは……………ダメだ。どうしても思い出せない。
学年が1つ上だったけど、割と近所で、仲がよかったお兄ちゃん的存在の優しい人。
苗字も覚えていない。顔もぼんやりとしか思い出せない。

あっちゃん、あっちゃん、

懐かしい響き。
何回も呼んだ、この名前。
思い出せないのがもどかしくて。


『もうあえないの?あっちゃん、ひっこしちゃったらあそべなくなっちゃうの?』
『なかないでたっくん。きっとあえるよ。 サッカーやってればまたあえる。』
『うん、さっかーがんばるね。やくそくだよ。』
『またあおうね!ばいばい!』


少しだけ思い出した。あっちゃんは遠くに引っ越したんだ。
それからずっと、ずっと会ってない。サッカー、続けているのに。
「…どう……んどう…」
あっちゃん、記憶にはあんまりないけど、それでも会いたいよ!
「…う……んどう…神童!!」
「あっちゃん…」
「は?」
あ、南沢さん…
「すすすすすみません!少し考え事してて!」
「いや…確かに俺は"あっちゃん"だけど」
小さいころは、そうつけたした。

そこで俺の、すべての記憶がつながった。


『たっくんおれ、きょうからサッカーやるの。』
『サッカーってなに?』
『んっとーこのボールけってあそぶんだ。このあいだテレビみてすっげーかっこよかったからきょうかられんしゅうするの!』
『ぼ、ぼくもさっかーやりたい!』
『うん、いっしょにやろっ!!』
『ありがとー!あっちゃんだいすきー!!!』
『おれもたっくんだいすき!!!』


「あの時の…あっちゃんは南沢さん…?!」
「じゃ…じゃあたっくんって神童…?!」
同時に同じ事を思い出して、お互い真っ赤になる。


「今でも好きですよ、あっちゃんさん。」






「(あっちゃんさんってなんだよ)」
「(だって先輩ですもん)」
「(あっちゃん呼ぶな)」
「(ではあっちゃん先輩で)」





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