Novel
君色スケッチブック
まずい。非常にまずい。
ずっとこっちを見ているマサキくんが怖い。
僕は冷や汗だらっだらで必死に目をそらすけど、そんなものは無意味なようでオレンジ色の目が僕を突き刺す。
「なーんか、隠してること、あるっしょ」
「ななななななないっよっ!」
まずい裏返った。どうしよ、どうしよ。バレたらやばいもん。でも言わなきゃ嫌われる・・・言っても嫌われそうだけど・・・。
わーんどうしよー!!
事の発端はついさっき。僕の家で2人勉強していたとき、僕はトイレに行った。
その間マサキくんは断りなしにベッドの横にあったスケッチブックを手にとっていたため、僕が慌てて取り上げたのだ。
どうにも挙動不審な僕に疑いがかけられたらしく、今現在目線でのやり取り。
いや、僕被害者だと思うんだけど・・・。
「そのスケッチブック、何描いた?」
「えとー・・・猫かなー」
「嘘。青色見えたし。猫青くねーし」
「あっははーそう・・・かなー・・・」
ギロリ。元々目つきがあまりよろしくないマサキくんに睨まれると本気で怖い。
僕は渋々スケッチブックを机に置いた。
「あのさ・・・何があっても、怒らない?」
「内容による」
「お願い!約束してよ!」
「・・・いーよ」
怒んないから見せろ、と少々乱暴な言い方をされて、あぁマサキくん本気で怒ってんなぁと考える。
「怒んないで・・・ね?」
意を決して水色が表紙のスケッチブックをめくった。
「は?俺・・・?」
そう。このスケッチブックにはマサキくんをいっぱい詰めてある。
いろんな角度からのマサキくんはどれもかっこよくて絵になるなぁとずっと感じてた。
桜の木の下から始まって、公園に海にいろんな所へマサキくんと行った思い出。12個のスケッチブックと、+マサキくんだけの水色。綺麗な水色を描きたかった、それだけの秘密。
「なんで・・・秘密にしてたの」
「だって恥ずかしいし・・・人物画得意じゃないしさ・・・」
「言ってくれればモデルとかやったのに!しかも寝顔しかないし!」
「マサキくん、忙しそうだったから・・・嫌がると思ってバレないように寝てる時狙って描いた・・・」
「そんだけ!?あー・・・もう、あー・・・ごめん」
何か、嬉しいわ。
内緒にしてたこと、勝手に描いちゃったこと、怒らせちゃったこと、ごめんなさい。
喜んでくれたこと、許してくれたこと、一緒にいてくれたこと、ありがとう。
桃に黄緑銀色、青色黄色黒に紫、赤と白と橙と緑色と、大切な12色と1年を君と入れたことに感謝します。
ありがとう、大好きだよマサキくん。
「そういや、なんで水色なんだ?」
「それはもちろん」
「君色スケッチブックだから!!」