Novel

 蜜柑色スケッチブック

今日も雪が降った。
電車とまったらしいから、慌てて来なくていいって電話しようとしたけど遅かったらしい。もう出ちゃってたみたいだ。

マサキくんは、最近よくうちに来る。親があまり帰ってこないから、寂しくなくていいんだけど。迷惑じゃないし。
でもさすがに大雪だった日には驚いた。おひさま園から僕ん家は電車が必要な距離で、でもその日はとまってて、それでも歩いてきたって。
なんで?って何回も聞いたけど、大体「理由がいるの?」と返ってくるってわかったからもう聞かないことにした。
僕ができることは部屋をめいいっぱいあっためておくことだから。


「どーも」
「こんにちはマサキくん」
「さすがに寒かったわー」
「だよね」

こたつみかんって最高とか話しながら早速スケッチブックを取り出す。
もうお決まりの流れだ。

「輝くんのスケッチブックみかんに見えてくる」
「お腹すいてるんなら、なんか作るよ?」
「いや、いい。それより何か絵くれよ」
「えーじゃあ交換ならいいよ」
「今の話はなかったことに」
「ずるいっ」

これもお決まりの流れ。
最近・・・というか1ヶ月前くらいから、マサキくんは絵を見せてくれなくなった。
正直さみしいし、見たいけど、嫌な奴だと思われたくないから何も言わない。気になるけど。気になるけど。
僕も隠し事してるしなぁ。

「青足りなくなっちゃった」

割と買ったばっかりだったのに。ちょっとショック。

「輝くんって最近青使うようなモン描いてたっけ」
「え?」
「だって最近は屋内ばっかだし。食いもんとかじゃ青いらないよね?」
「あーまー色々使ってるよ・・・その、影とか」

嘘はついてない。僕は影によく青を使う。ちょっと混ぜるだけで結構変わるんだ。

「ふぅん」

そうなんだ。ってマサキくんは後ろを向く。前はあんなに・・・って僕何でこんなにマサキくんのこと考えてんだろ。変なの。


「みかん、半分こしねー?」
「するする!」
「じゃ、剥いて」
「えー!?」
「ほら、スケッチブックみかんだし」
「関係ないし!関係ないし!」

僕らがみかんのカゴをひっくり返すまであと3秒。





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