Novel

 椛色スケッチブック

さわさわ。
さわさわ。

何にもない日を好きに過ごすのが好き。
フラフラと歩き回るのが好き。
スケッチブック片手に、水色のあの子を探すのが好き。


「マサキくんっ!!」

僕の休日は彼で始まり彼で終わるのだ。



「あれ、今月は赤?」
「うん椛綺麗だったから。もう結構描いたんだー」
「確かに綺麗だな、俺輝くんの描く椛好きだわ」
「ありがとー!!」


たわいない会話、次の瞬間には忘れてるかもしれない会話。
その中に数少ない彼からの好き、があって僕はちょっと嬉しくなった。
いつも青ばっかり使ってるから赤も使わなくちゃね!

「もう秋かー…早いね」
「俺らが初めて会ったこの桜の木もさ、春はピンクで、夏は緑で、今はこうして真っ赤だろ?時の流れってすごいよな」
「あはは!スケッチブックも8冊目だしね!」
「輝くんと会うまで絵とか描かなかったから…何か、楽しかった」


部活も忙しくて、中々こうやって時間は取れなくなってきた。
その中でも僕は少しずつスケッチブックをうめる。
彼と過ごした12ヶ月分を12冊にまとめたい。ただ、それだけ。


「やっぱ赤塗るの苦手!夏ん時の木もそうだったけど、俺人物画の方が向いてるかもしれねぇ」
「マサキくんは肌の色使い綺麗だよね。僕は人物画苦手だよー難しい!」
「マジで?よっしゃ、今ちょっと頑張ってるんだよね、今度見せるわ」
「うん、楽しみにしてる」


本当に本当に楽しみにしてる!

君との会話を椛に詰めて、いつか来るその日まで。





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