Happy 10 minutes (ページ1/5)
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剣道場から気合いの入った声が聞こえてくる。
その声を聞きながら、私は道場入口の脇で壁にもたれ、中の朝稽古が終わるのを待っていた。
時刻は午前7時45分。
あと5分きっかりで稽古を終えて部員が出てくる。
もっとも、朝稽古をする真面目な部員はこの剣道部にたったひとりしかいない。
朝稽古までして強くなろうなんて思う向上心豊かな部員は彼を除くと他にはいないためだ。
うちのような弱小剣道部では仕方のない話なんだろうけど、とにかく、その彼を毎朝待って出迎えるのが私の日課になっている。
もちろん、やれだなんて誰にも言われていない。
私が勝手に日課にしてるだけのこと。
しかも、6時半から始まる稽古に最初からつきあうわけじゃなく、終わる5分前にやってきてたった5分待ってるだけ。

これじゃ彼女失格かな……。

でも、こんな冬の早朝に外気にさらされたまま1時間以上も立ってるなんて、とてもじゃないが出来かねる。
さらには、道場の場所もよくなかった。
校内裏手に位置し、人通りもなければ日当たりも悪いときている。
そんな場所の寒さは本当に体の芯からくる感じなのだ。

それで風邪ひいても心配かけちゃうしね。

まんざら的はずれでもない言い訳をしつつ、私はタオルを持つ手に、はふーっと白い息を吐きかけた。
今日は使い捨てカイロを忘れたおかげで一段と手が冷たい。
かじかむその手を温めようと擦り合わせたとき、すぐ横の扉がガラララと重たい音を立ててスライドしはじめた。
ドキンと胸が跳ねたあと、ふわりと気持ちが舞い上がる。
その想いを後押しするかのように、中からは私の待っていた人物が姿を現した。



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