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上忍同士、なんだかんだと任務や会議に追われて忙しく、陶芸の約束を叶えられたのは結局三月も中旬、ホワイトデーの日となってしまってからだ。

「あら、素敵な作業所じゃなぁ〜い。静かでいいわね」

山の中に構えられた作業所に足を踏み入れ、名無子が満足そうな声をあげた。
木の葉の里にほど近い山中の小さな木小屋が俺が少し前よりお世話になっている陶芸教室の作業場だ。
俺はそこの先生に頼み、今日一日名無子と二人でここを自由に使えるようにしてもらっていた。
小屋の中は蹴りろくろを始め、作品を乾燥させるための板棚や作業台、色塗りに使う釉薬(ゆうやく)などいろいろな物が置いてあり、雑多としてはいるがきちんと掃除もされ小奇麗に整えてある。
初めて陶芸をする名無子は道具類のひとつひとつが珍しいのだろう、それらを興味深々に見てまわっていた。
俺は荷物を作業台に置き、一通り必要なものを蹴りろくろのまわりに用意してから、名無子に声をかけた。

「さてと、今日一日貸し切りとはいえ、早く始めないと終わらないよ?」

ただでさえ、陶芸というのは時間がかかる。
本来は使う粘土を練るところから始め、それを成形し、乾燥させ、低温で焼く素焼き、色付けの施釉(せゆう)、高温での本焼きを経て完成となる。
しかし、その全工程を一日、それどころか数時間で終えるというのはどだい無理な話であって、俺たちが今日やる部分は蹴りろくろを使っての成形のみ、あとの工程は俺が代わりにやることにしていた。
とは言え、成形にしたって初めてやる名無子にはかなり時間を要するだろう、時間はあってもありすぎるということはない。
俺は前に来た時にこの日のため練っておいた粘土をバックパックの中から取り出した。
粘土は乾燥防止のためラップやビニルでグルグル巻きにされており、俺はそれら外装を丁寧にはぎとった後、ろくろの上に置いた。



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