約束の仕方 (ページ1/10)
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待機所前の廊下で教え子を見送ると、その子と入れ違いにでっかい紙袋を手に提げた女性が現れた。
スッと筆で描いたようなきれいな眉の下には切れ長な瞳が流れ、唇はぽってりとふくよか、首筋を辿れば華奢な体に不似合いな大きな膨らみを持つ胸元が目に飛び込み、そこにかかるゆるやかな癖のあるライトブラウンの髪の毛が窓から差し込む陽の光の当たり具合によって時折キラリと金色に揺れる。
一目で名無子だとわかった。
俺はこちらに向かって歩いてくるその魅力的な人影にゆっくりと声をかけた。

「ずいぶん重そうじゃない」
「そうなのよぉ〜、今年はみんなにチョコあげようと思って張り切ったんだけど、重くて、重くて。ちょっとカカシィ、見てないで持ちなさいよ」
「ハイハイ」

俺は苦笑を浮かべて荷物を受け取った。
名無子のオバちゃんみたいな遠慮無い物言いは相変わらずで、妖艶な女の色気を備えた外見とギャップがあり過ぎて笑いが漏れる。

ま、それが名無子の良さだけどね。

お高く留まってもおかしくない容姿のくせに、実際話してみればそういう鼻もちならないところは微塵も感じない。
それどころか逆に自分の品位を落としてるんじゃないかと思うようなオバちゃんくさいマイペースっぷりさえ見せてくる。
俺に言わせれば名無子の魅力はそこにあって、そのアンバランスさに知らず知らず引き込まれて行ってしまう。
まさに俺がいい例だ。
受け取った紙袋が俺の手の中でズシッと重みを主張し、その中身に目を向ければ10cm四方程度の箱がてんこ盛りに入っているのが見えた。



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