over the dark (ページ1/15)
名無子は俺の前で、泣きながら笑った。
「私、シカマルと別れるね」
任務から帰ってきた俺は、リビングに入るなりそう言われ、声も出せずに名無子を見た。
え?
何言って……。
数秒の空白を経て、ようやく我にかえる。
「オマッ…別れるって! どういうことだよ、名無子?!」
だって俺達うまくいってたじゃねぇーか!
一緒に住み始めてずいぶん経つけど、…そりゃ確かにいっぱいケンカはしたさ。
けど、いつも仲直りもして、ちゃんとわかり合って、そうやって仲良くやってきたじゃねぇーか!
それを、なんで急に……?
俺が理由を聞いても、名無子は、
「別れよう」
って言うだけだ。
俺はわけもわからず、とうてい正常とは言えねぇー頭で、必死に訳を考える。
コイツの顔を曇らせてしまったことはなかったかって、真剣に思いだしていく。
「もしかして、昨日お前が手ェ滑らせて皿割ったとき、俺がふざけてからかったのが気に障ったのか? あ、それとも、最近お前の帰りが遅いって言ったの、怒ってるとか? そうだ、俺が休み取れねぇーことにお前ずっと不満言ってたっけ?」
俺は思いつくものすべてを片っ端から口にした。
「悪気はなかったんだ。でも、それでお前が嫌な思いしたっつぅーんなら全部謝る。直せるとこは直すようにするし。だから……」
そんなこと言うなよ―――。
それでも名無子は首を振って、
「ごめんね、シカマル。もう、無理なんだ」
泣きながら笑っただけだった。
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