陽の当たる場所 (ページ1/3)
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野原で本を読んでいた。
体の右側を下にして草地に寝そべり、僕は右腕で腕枕して、眼鏡越しに文字を追っていく。
時折、読み終えたページをめくる僕の左手以外、これと言って動くものなど何もない。
そんな僕の前で、恋人の名無子はスピスピと気持ちよさそうに寝息を立てていた。
先ほどまでムシャムシャとまん丸のでっかいチョコパンを食べていた名無子は、今はお腹がいっぱいになったのか、お腹を上にして、飼い主を前に腹を見せる子犬のような無防備さで眠っている。
きっと敵からの急な襲撃があったら、まず最初に死ぬのは名無子に違いない。
それくらい、実に警戒心の欠ける格好で草の上に転がっている。
忍としての防衛能力0%の名無子を見つめ、僕は、寝るのならわざわざここにいなくてもいいのにと思う。
本を読んでる僕と一緒にいたって話ができるわけじゃないし、名無子だってつまらないはずだ。
だったら、どこか別の場所に行った方がいいんじゃないだろうか。
そんなことを考えながら、でも僕は、こうして僕のそばにいて、ふとした瞬間、僕の視界に入り込む名無子の存在にひどく胸が温められる。
それはちょうど陽だまりの中にいるような、そんな温かさで、なぜかとっても心地が良かった。
開いていたページの最終行を読み終え、僕が左手で次のページをめくろうとした時、フッと目覚めた名無子がむくりと体を起こした。
あきらかに寝ぼけた顔つきで一生懸命、目をパチパチさせて、名無子はがんばって意識を取り戻そうとしている。
そんな名無子から視線を戻し、僕は手元のページをめくって再び本を読み始めた。



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