君ニ捧グ-1 (ページ6/9)
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風向きに注意して、キバの風下を繋いで後をつける。
でも、そんなことしなくても、今のキバなら私の匂いなんか気づかないかもしれない。
どこか抜け殻みたいな空虚さを漂わせるキバに私はそう思った。

どこへ向かっているんだろう?

その疑問に答えるように、しばらくしてキバの歩みが遅くなった。
辿り着いた場所は風の吹き抜ける丘の上。
木の葉の里を守るために死んでいった者たちの魂を静める神聖な墓地だった。
その中の墓碑の一つを前に、キバがそっと座り込む。
そこは彼の大切なマリアが眠る地。
片膝立ててあぐらをかくキバの背中を、私は少し離れた場所から静かに見つめた。
月明かりの中に浮かぶ微動だにしないキバの後ろ姿はひどく儚くて、居たたまれぬ思いがわきあがる。

私は一体、何をしてるんだろうな……。

こんなキバを見てたって、私は彼の、彼女への愛しい思いばかり感じてしまうだけなのに。
それでも私にはやっぱり、どんなに自分の胸が痛んでも、こんな彼を放ってはおけない。
私は固く目を閉じた後、その目をゆっくりと開いて、大きく足を踏み出した。
キシッキシッと草を踏む音が辺りに響く。
その音に気づいて、キバがハッと振り向いた。

「名無子……。」

予想もしなかった私の出現に驚くように、キバが私の名を呼んだ。
私は彼の横にトンッと座って、その顔を覗き込む。



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