reach for you-2 (ページ3/16)
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私はこの期に及んでようやく気が付いた。
周りを炎に囲まれた熱い大気の中で、この人の、いつだって自分に向けて差し伸べていてくれた手の存在に、私はようやく気づき始めた。
私が不安なときや寂しいときは、シカマルがいつだって必ず、私を助けるために手を差し伸べててくれた。
私のことを気にして、そばにいて、声をかけて。
いつだってちゃんと私に向かって手を伸ばしてくれてたのに。
それに私は気づかないでいた。
気づかないどころか、ろくに眼も開けず、眼を瞑ったまま見ようともしていなかった。
そして、むげにその手を振り払って。
私は自分で築いた孤独に溺れて、一人で勝手に寂しがっていたんだ。

寂しいとか、不安だとか、そんな状態をつくっていたのは、誰じゃなく、自分自身じゃないか――。

グッと胸が鷲掴みされるようだった。

きっとシカマルだけじゃなく、他の全ての人だってそうなんだ。
きっと、みんな優しかったんだ。
それを拒否していたのは私の方で。
きっと、私が一人で勝手に寂しがっていただけなんだ。
ずっと、ずっと、それを繰り返してきたんだ。

そんなことを今さら始めて気づいた自分の愚かしさに泣けてきそうだった。
辺りはますます火が勢いを増し、周囲はもう既に火の壁と化している。
降りかかる火の粉に、炎の照り返しに、肌がピリピリと焼け付いた。
そんな状態にも関わらず、シカマルを押し潰している木は一向に動く気配すら見せない。
それどころか、この木にも炎が燃え移ってきている。
とにかく時間がない。
私は夢中で木にしがみついた。
そんなとき、シカマルの声が炎の熱気に紛れて届いた。



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