意外と賢さ-3 (ページ5/11)
だが、かわりに今度は名無子の体がバットの餌食になろうとしている。
ついにバットが名無子に届く――まさにそのとき、
ガッ!!
突然、何かに拘束されたように敵の動きが止まった。
え……?
名無子が息を飲んで、バットを持つ男から辺りへと視線を移す。
と――。
「はい、そこまで」
気だるい声が耳管を震わせるとともに、名無子の視界にひとりの男が映った。
黒い髪を頭の高い位置で一本に結んだ、目つきの鋭い木の葉の忍。
シカ……マル……。
名無子は口をあんぐりと開けて、その男の名を胸に呟いた。
シカマルは両手で印を組み、名無子から少し離れた場所に突っ立っている。
ただそれだけなのに、名無子のまわりに位置する砂の連中はみな、シカマルの術が効いて動けない。
誰も微動だにしない状況で、シカマルは一瞬名無子に視線を寄こした。
めんどくさそうな顔の割にはまったく隙のないシカマルに、名無子の心臓がバクリと音を立てた。
え、なんか……カッコよくないか、アイツ?
ふっと浮かんだそんな思いも、するりとはずされたシカマルの視線によって霧散する。
我に返った。
ちょっ……なに考えてんだ、私ッ?!
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