意外と賢さ-1 (ページ5/11)
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「第一、初対面のヤツに子供預かれとか言われて素直に預かるわけねぇーだろ。めんどくせぇー」

それでも名無子は怯むことなく、男の足元へ子供をグイッと押しつけた。

「あぁ、もう、だっりぃーな!! とにかく頼んだぞ!!」
「はッ?!」
「だから、お前に任せた!! あとはよろしく!!」

言い捨てるなり、名無子は背を向け、ダダッと駆けだした。

「ちょッ!! おまッ…、待て!!」

慌てて、男が叫ぶ。
だが、当然名無子が待つわけもなく、全力疾走で駆け去っていく。
あっという間にその姿は小さくなった。
遠ざかる名無子の後ろ姿に男がもう一度、声を張り上げる。

「お前、ちゃんと迎えに来んだろうなッ?!」

問いかけに返ってきたのは、ただただ耳に響く静けさのみだ。
足元に小さな男の子を抱えながら、黒髪の男、シカマルは眉間にしわを寄せた。
視線を落とせば、男の子の小さな頭と、つま先のすぐ近くに火の消し忘れた煙草が一本落ちているのが見える。
それを靴裏で苛立たしげにひねり潰した。

「めどくせぇーな、もう」

頭上で木々の葉が風に揺られて、さわさわと鳴った。





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