our pleasure (ページ5/7)
グーーー。
キュルルルルゥーーー。
景気よく鳴った腹の虫に僕たちのキスは阻止された。
僕たちは顔を見合わせ、笑いだしてしまった。
「すごいな、お腹の音」
「そういえば、私たち、朝ごはん食べてないもんね」
「たしかに。言われてみると、なんかお腹空いてきたな」
「言えてる〜。どっか食べにいこっか」
「そうだね」
名無子の提案に僕も快く賛成する。
僕たちは体を起こして立ちあがり、雪まみれの衣服をパンパンはたいた。
それが済むと名無子が僕の腕に腕をからませ、ニコリと僕を仰ぎ見る。
「じゃあ、しゅっぱぁ〜つ!」
空腹の割にはハツラツな名無子に問いかける。
「何食べる?」
「私はサイが食べたいものなら何でもいいかな。サイは何食べたい?」
「僕? そうだなぁ……」
歩きだした僕たちの周りには、足跡だらけの雪野原が広がっている。
目に映るそれが、僕には、僕たちふたりがつけた楽しさのしるしのように感じられた。
そして、その楽しさはきっと一人じゃ作れないものに違いない。
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