our pleasure (ページ3/7)
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それから僕は手早く出かける準備をし、部屋で待たせていた名無子と一緒に野原に行った。
そこはまだ誰の足跡もないまっ白なふかふかした雪で覆われていた。

「わ〜、新雪、キレイーー!!」

名無子は寒さにまっ白くなった息とともに歓声をあげ、穢れの知らぬ雪の上を一歩一歩嬉しそうに歩きだした。
まっさらだった雪の野原に名無子の足跡が刻まれていく。
僕も一緒になって、白紙のキャンバスみたいな雪原に自分の足跡をつけてみた。
ふわりふわりと足が雪の中にしずんで、振り返ればそこに自分と名無子の足型が残されている。
なんだかちょっと気持ちがいい。
キレイなものを汚す背徳的な、でもたいしたことのないいたずら程度の罪悪感。
そして、それを名無子とやっているという満足感。
そういったものが混ざり混ざって快感めいた感覚を生み出している。
名無子が野原のいろんなところを踏みつけながら、僕に声をかけた。

「誰も踏んでない雪を踏んでいくのって、なんか嬉しいよね!」
「うん、そうだね」

間髪いれずに答えた僕に笑顔を向けて、それから名無子は足元の雪をひとすくいすると、いきなり僕に向かって投げつけた。
パシャッと肩先に当たった雪が顔に跳ね、僕は悲鳴にも似た声を上げる。

「うわ、冷たい!」

そんな僕をおかしそうに名無子が笑った。



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