our pleasure (ページ1/7)
早朝、僕の部屋にドアをノックする音が響いた。
その音に目を覚まし、玄関の扉を開けてみると、外には名無子が申し訳なさそうな、それでいてどこか嬉しそうな顔で立っていた。
「ごめんね、サイ。ずいぶん早く来ちゃって。まだ寝てた?」
「うん……今、何時?」
「6時過ぎ」
僕はあくびをかみ殺し、彼女を見る。
たしかに今日、彼女と会うことにはなっていた。
でもそのデートの約束には少なく見積もってもまだ3時間はある。
「ほんとに早いね。一体どうしたの?」
早く来た訳があるのだろうと問いかければ、案の定、彼女は顔を輝かせ、僕の腕を引っ張った。
「ねぇ、見て見て!」
玄関から外へ倒れ込むように一歩踏み出す。
体を包んだ外気の冷たさにブルッと震え、思わず腕を組むと、彼女のはしゃぐ声が聞こえた。
「ほら、キレイじゃない?!」
キレイ?
一体なんの話だろう。
僕はまだ眠気の残る目を前方へ上げて見る。
と――。
目を向けた野外の景色から瞳を刺すような白い光が届いた。
「ゆ、き……」
僕は思わず呟いた。
あたり一面、まっ白な雪景色が広がっていた。
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